2024.02.22

Amazon AppStream2.0で変わるCAD業務|移行のメリットや導入事例を紹介!

通常、CADを動かすためにはパソコン(ワークステーション)に高い性能が要求されるため、さまざまな制約を受けやすいのが難点です。そこで紹介したいのが、Amazon AppStream2.0です。今回は、従来のCAD利用時の課題を解決し、効率化を図るAmazon AppStream2.0の特長やメリット、具体的な導入事例などをご紹介します。

CADのよくある悩み

CADを利用する際、利用者はさまざまな問題に直面してきました。

CAD端末によるさまざまな制約

多くのCAD利用者が抱える悩みのひとつが、CAD搭載のパソコン(ワークステーション)を使う際に、場所や時間の制限を受けることです。CAD作業を行うには高性能パソコンが必要です。高性能パソコンは、高価かつ物理的な制約により、複数の場所への配置の難しさ・持ち運びできない不便さなどの問題を生んでいます。結果、業務の生産性低下につながっています。

例えば、現場や打ち合わせなどでは、CADが手元にありません。そのため、修正対応には帰社する必要があります。修正対応後、CADが手元にない状態で再度打ち合わせを実施するとなれば、時間・コストロスにつながり、業務の生産性低下を招きます。また、複数の事務所(もしくは拠点)でCADを利用している場合は、メンテナンスや障害発生時の対応が一元化できず、管理コストが増加する要因となる場合もあるようです。

こうした問題を解決する方法として、仮想デスクトップ(VDI)の導入があります。しかし、オンプレミスでVDIの導入を実現しようとすると、サーバー設備、ストレージ、ネットワーク設備といった初期投資が大きなハードルとなる場合もあります。

CADをどこでも利用できるようになる? Amazon AppStream2.0とは

そのようなCADにまつわる悩みを解決してくれるのが、Amazon AppStream2.0(以降、AppStream2.0)です。ここからは、AppStream2.0の基本的な特長・類似サービス「Amazon WorkSpaces」との違いなどを詳しくご紹介します。

Amazon AppStream2.0とは

AppStream2.0は、フルマネージド型のデスクトップ・アプリケーションストリーミングサービスです。任意のアプリケーションや仮想デスクトップを配信でき、煩雑なサーバーの構築や運用、障害対応はすべてAWSに任せられるため、専門知識がなくても運用できます。また、パソコンなどのユーザー端末がインターネットへ接続していれば、いつでもどこでも、仮想デスクトップやCADなどのアプリケーションに接続できます。オンプレミス環境との連携も簡単です。

なお、AppStream2.0には、2種類の配信タイプがあります。

  • アプリケーション配信:特定のアプリケーションのみをユーザーに提供できる方法
  • デスクトップ配信:AWS上で仮想のデスクトップ環境を配信できる方法

Amazon WorkSpacesとの違い

AWSでは類似サービスとして、Amazon WorkSpaces(以降、WorkSpaces)を提供しています。

両サービスの違いとして挙げられるのが、ユーザーが利用する際のデスクトップ環境の「永続性」です。「利用のたびにデータが初期化されるかどうかの違い」と考えるとわかりやすいでしょう。

WorkSpacesは、毎回同じ仮想デスクトップ環境がユーザーに割り当てられ、ファイル・設定などの保存が可能です。一方、AppStream2.0は、基本的に非永続型です。毎回初期化されたデスクトップ環境が割り当てられる仕組みとなっています。ただ、AppStream2.0では、一部のデータを永続化させる設定も可能で、用途に応じた使い分けが可能です。

またAppStream2.0は、特定のアプリケーションのみをユーザーに提供できる点も大きな違いです。

WorkSpacesのコストは「月額料金もしくは使用時間/台」で課金される仕組みです。AppStream2.0では、配信タイプなどにより料金体制が異なります。

AppStream2.0について詳しく知りたい方、両サービスの違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。

AWS活用法 |リモートワーク環境としておさえておきたい「Amazon AppStream2.0」とは?

Amazon AppStream2.0を使ってCADを利用するメリット

ここからは、AppStream2.0を使ってCADを利用する際の、メリットをご紹介します。

管理運用業務の負荷削減につながる

従来であれば、CADを利用する端末へセキュリティ・ネットワーク・システム設定などが必要です。またアプリケーションなどを運用する場合、ユーザーの端末周辺環境の違いから「マニュアル通りに対応できない」などの問い合わせが発生し、運用業務の負荷が大きくなります。しかし、AppStream2.0を利用すれば、CADを利用する端末へアプリケーションをインストールせず即利用できるため、運用業務の負荷削減につながります。

AppStream2.0を利用すると、AWS側にインストールされた同じ設定のアプリケーションを、すべてのユーザーが利用できる環境を簡単に構築できます。これによって端末管理を一元化でき、アプリケーションのバージョンアップ・メンテナンスの工程数も、大幅に削減でき、管理業務の負荷削減につながります。

さまざまなデバイスからアクセスできる

AppStream2.0は、Webブラウザからアクセスする形式です。HTML5準拠のブラウザであれば、ユーザーはWindows、Mac、Chromebook、Linux PCなどのデバイスを問わずにアクセスできるため、外出先からも随時修正や確認、共有などを行えるようになります。

初期費用をおさえられる

AppStream2.0は、利用ユーザー数・インスタンスタイプ、OSなどに応じた従量課金制です。初期費用や長期契約はなしで、スモールスタートができます。また、利用量を自動で調整する機能があるため、複数のユーザーがアプリケーションを同時利用する場合は、自動的にリソースを増やします。逆に、利用ユーザーが少ない場合は、自動的にリソースを減らして運用コストを削減します。

Amazon AppStream2.0の導入事例

最後に、AppStream2.0を導入して、見込み客数が21倍に伸びたアメリカのCADソフト会社SOLIDWORKS(ソリッドワークス)や、サムスングループの子会社Samsung Engineering(サムスン エンジニアリング)の導入事例をご紹介します。

SOLIDWORKS

CADソフト開発会社SOLIDWORKSは、世界中で300万人の専門家に利用されていますが、アプリケーションの無料トライアルを推進する際、大きな問題に直面しました。それは、アプリケーションサイズの容量の大きさです。無料トライアルのアプリケーション容量が約5GBあり、ダウンロードに丸一日かかってしまうこともありました。容量の大きさが多くのユーザーにとってハードルとなり、無料トライアルの登録者数が伸び悩んでいたのです。

この問題を解決すべく、AppStream2.0が選ばれました。AppStream2.0を利用することで、ユーザーはアプリケーションをダウンロードやインストールすることなく、直接トライアルを利用できるようになり、ユーザーは数秒で無料トライアルをスタートできるようになりました。

さらに、AppStream2.0を介して新機能のβテストにもアクセスできるようにしたところ、見込み客数が毎月1,000人から21,000人の21倍に増加。フィードバックをより迅速かつ効率的に集められるようになったといいます。

さらに詳しく知りたい方は、AWS公式導入事例ページよりご確認ください。
SOLIDWORKS導入事例 新規ウィンドウで開く

Samsung Engineering

Samsung Engineeringはサムスングループの一員として、グローバルエンジニアリング、調達、建設(EPC)業務を提供する企業です。北中米、アジア、中東、ヨーロッパなど、世界中で石油、精製、産業分野の大規模施設の設計、建築、管理などを行っています。

同社は、プロジェクトの設計やクライアントとの連携にHexagon(ヘキサゴン)が提供するプラント設計ソリューションを利用していました。しかし、新しい注文が入るたびにこの設計ソリューションをローカルに迅速に確立する必要があり、そのプロセスは非常に複雑で多くの時間と費用が割かれていました。

これらの問題に対処するため、AppStream2.0を活用してHexagonソリューションを仮想化。ブラウザから直接アクセス可能にすることで、オンプレミスインフラストラクチャでのデプロイを不要にしたのです。この一連のアプローチにより、どこからでも遅延なくアクセス可能になり、新しいプロジェクトのスタートアップ時間を大幅に短縮することにも成功しました。以前は新プロジェクトの準備に2カ月かかっていましたが、今では数日で完了するようになったとのことです。ブラウザ成果は大きく、プロジェクトコストの20%削減にも成功し、管理に必要な人員は4人から1人へと削減できました。

さらに詳しく知りたい方は、AWS公式導入事例ページよりご確認ください。
Samsung Engineering導入事例 新規ウィンドウで開く

まとめ

AppStream2.0を活用すれば、CADを利用する際に起こりがちな、さまざまな課題を解決できます。長期契約や初期コストも不要でスモールスタートが可能であり、リモートアクセス環境の構築や連携の強化など多くのメリットを享受できます。ご興味のある方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

なお、TOKAIコミュニケーションズでは、EUC分野でのAppStream2.0などの導入・運用実績も豊富です。AppStream2.0を使ったCADの運用や導入を、AWS認定資格保持者がトータルでサポートしています。導入を検討されているご担当者や経営者の方は、お気軽にご相談 新規ウィンドウで開くください。

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