AWS IoT Coreとは、数十億個のIoTデバイスをクラウドに安全に接続し、デバイス間でやり取りされる数兆件のメッセージをルーティング・処理するための「完全マネージド型サービス」です。
企業におけるIoT活用は、生産効率の向上や新たなビジネスモデルの創出に不可欠です。しかし、数万〜数百万のデバイスがインターネットに接続されることで、「膨大なトラフィックの処理遅延」や「悪意ある攻撃によるセキュリティリスク」が急激に高まります。
本記事では、AWS最上位パートナーの視点から、AWS IoT Coreのサービス概要や料金体系に加え、「デバイスからクラウドまでの通信をいかにセキュアかつ低遅延に構築するか」という実践的なアーキテクチャについて解説します。
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AWSの基本から、コスト削減、セキュリティ対策、そして具体的な導入事例まで、AWS活用に必要な情報がこの一冊にまとまっています。
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目次
AWS IoT Coreとは
AWS IoT Coreは、複数のIoTデバイスを一元管理して制御できるサービスです。専門知識がなくても簡単にIoTシステムを構築でき、デバイスのデータ収集や分析、セキュリティや自動スケーラビリティなど、IoTシステムに必要な機能を備えています。AWSは、IoTシステム構築に必要なさまざまなサービスを提供しており、中でもAWS IoT Coreは、その中核を担う存在です。複数のIoTデバイスから送られてきた情報を集約し、その他のAWSサービスに送るハブとしての役割を担っています。
AWS IoT Coreが選ばれる理由と中核となる5つの機能
AWS IoT Coreは、IoTシステム構築の中核(ハブ)を担うサービスです。専門的なインフラ構築の知識がなくても、以下の5つの強力な機能により、安全かつスケーラブルなIoT基盤を迅速に展開できます。
| 機能名 | 役割・概要 | 解決する実務課題 |
|---|---|---|
| デバイスゲートウェイ | MQTT、MQTT over WebSockets (WS) Secure、HTTPSといった複数のプロトコルを管理し、デバイスとAWS間の通信を仲介します。 | 多種多様な規格のデバイスからの通信を、クラウド側で統一的に効率よく受け入れます。 |
| 相互認証サービス | TLSを用いた相互認証と暗号化を提供。AWS側が正しいデバイスか(クライアント認証)、デバイス側が正しいAWS環境か(サーバー認証)を確認します。 | 不正なデバイスによるシステム侵入やデータの改ざん、なりすましを強固に防止します。 |
| メッセージブローカー | 「Publish(送信)/ Subscribe(受信)型モデル」を採用し、送信と受信を独立させた非同期処理でメッセージをルーティングします。 | 数百万台のデバイスから送られてくる大量のデータを、遅延なく適切な処理システムへ振り分けます。 |
| ルールエンジン | SQLを用いてデータをフィルタリングし、Amazon S3やAWS Lambdaなどの他のAWSサービスへデータを転送・加工します。 | 特定の条件に合致するデータのみを抽出し、不要なデータ処理を省くことでバックエンドのコストを最適化します。 |
| デバイスシャドウ | クラウド上にデバイスの最新状態(状態情報:電源のオンオフや温度など)を仮想的に保持・保存します。 | デバイスがオフラインになっても直前の状態を確認でき、再接続時にスムーズに正常な状態へ同期させます。 |
AWS IoT Coreの料金体系
AWS IoT Coreは、インフラストラクチャ費用や初期ライセンス料が一切不要な「完全な従量課金制」を採用しています。使用したコンポーネント(接続時間、メッセージング、ルールエンジンの実行など)分のみが課金されるため、PoC(概念実証)フェーズのスモールスタートから、大規模展開までコストを最適化できます。
【料金例】
- AWS IoT Coreとデバイスの接続:0.096 USD(接続100万分あたり)
- MQTTおよびHTTPのメッセージング料金
- メッセージ10億件まで: 1.20 USD(メッセージ100万件あたり)
- 次のメッセージ40億件:0.96 USD(メッセージ100万件あたり)
- メッセージ50億件超: 0.84 USD (メッセージ 100 万件あたり)
最新の料金プランは、AWS公式サイト をご確認ください。
AWS IoT CoreのユーザーがAWSアカウントを作成した日から、12か月間の無料利用枠が用意されています。無料枠の上限は、以下の通りです。
- 接続時間:225万分
- メッセージ:5万件
- レジストリまたはデバイスシャドウのオペレーション:22万5千回
- トリガールール:25万件
- 適用アクション:25万件
AWS IoT Coreを利用するメリット
続いて、AWS IoT Coreを利用する際の主なメリットを解説します。
AWSの他のサービスとの連携がスムーズに行える
AWS IoT Coreの最大の利点は、他のAWSサービスと連携したIoTシステムの構築が容易になることです。Amazon S3やAmazon QuickSight、AWS LambdaなどさまざまなAWSサービスとシームレスに連携でき、分析を促進できます。AWSは、AWS IoT Core以外にもさまざまなIoTサービスを提供しており、こうしたサービスを活用することで、専門知識がなくても、簡単にIoTシステムを構築できます。
本文内にご紹介した親和性の高いサービスについて更に知りたい方は、以下の記事を参照してください。
【参考記事】Amazon S3入門|導入メリット・機能・ユースケース・料金を解説
【参考記事】Amazon QuickSight入門|活用事例やダッシュボード作成時のポイントを紹介!
【参考記事】サーバを立てずにプログラムを実行できる「AWS Lambda」とは?
セキュアなIoTシステムを構築できる
先述の通り、AWS IoT Coreでは、さまざまな認証サービスが用意されています。接続するすべてのポイントで相互認証と暗号化を行えるため、安全な通信を実現できます。デバイスとAWS IoT Coreの間では、信頼できるデータのみが交換されることとなり、セキュリティ面で非常に信頼できるシステム環境の構築が可能です。
大規模なIoTシステム構築も可能
IoTシステムは、高いスケーラビリティが求められます。デバイスの増加に伴って、システムに接続されるデータ量が爆発的に増大し、処理能力が不足する可能性があるためです。その点、AWS IoT Coreは、自動スケーリング機能を装備しているため、デバイスの増加に合わせたシステムの自動拡張が可能です。高い可用性とパフォーマンスを担保でき、大規模なIoTシステムでも安定に稼働させられます。
【重要】IoTプロジェクトの壁「通信経路のセキュリティ」
多くの企業がIoTシステムを構築する際、デバイスからAWS IoT Coreへデータを送信するために「通常のインターネット回線」を利用しがちです。しかし、エンタープライズのインフラ担当者として、ここに重大なリスクが潜んでいることを認識しなければなりません。
どれほどAWS側のセキュリティ(相互認証など)が強固であっても、通信経路が公衆インターネットである以上、DDoS攻撃や中間者攻撃のリスクに常に晒されます。
解決策:完全閉域のIoTネットワークアーキテクチャ
この深刻な課題に対し、TOKAIコミュニケーションズでは、自社の法人向け通信サービス「BroadLine」と「AWS Direct Connect(専用線接続)」、そして「セキュアなIoT向けモバイル回線(SIM)」を組み合わせた閉域網接続を推奨しています。
デバイスからキャリアのモバイル網を通り、インターネットに一切出ることなくAWS環境(VPC)まで到達する「完全閉域のデータ収集プラットフォーム」を構築することで、極めてセキュアかつ安定したIoTインフラを実現します。
大規模なビジネス変革を支えるAWS IoT Coreの活用事例
ここからは、AWS IoT Coreの活用事例を3つ紹介します。具体例を知ることで、自社の課題解決へのヒントを得られるでしょう。
【建材業界】LIXIL
会社の概要
株式会社LIXILは、お風呂やトイレ、キッチンなどの水周り製品、窓やドアなどの建材を中心とした住関連サービスを提供する総合住宅設備機器メーカーです。
抱えていた課題
商品の再配達時に発生する課題をはじめとした物流問題に対応するため、戸建住宅向けの「スマート宅配ポスト」を開発する運びとなり、IoTプラットフォームの構築を行うことに。その際、迅速なサービスリリースの速度や、公開されている技術情報の豊富さなどの理由から、AWS IoT Coreを採用することになりました。
AWS IoT Core導入による効果
AWS IoT Coreを導入した結果、6か月でIoTプラットフォームの構築に成功し、インフラ運用の負荷も大幅に削減できました。今後はスマート宅配ポストを業界全体に浸透させるため、宅配業者やハウスメーカー、EC事業者にデータを公開するとともに、APIを活用して他のサービスと連携することを目指しているそうです。
【PC周辺機器メーカー】Belkin
会社の概要
Belkinは、コンピュータの周辺機器を開発・販売しているアメリカの会社で、日本でもApple製品の周辺機器の販売などで知られています。
抱えていた課題
同社が開発した家電製品を遠隔操作できる製品「Wemo」を運用するにあたり、従来のサーバーでは管理が非効率で急激に増加するデバイス数に対応できず、システムの不安定化や開発サイクルの長期化などが課題となっていました。そこで、AWS IoT Coreを採用し、IoTプラットフォームの刷新に着手しました。
AWS IoT Core導入による効果
AWS IoT Coreを活用した結果、開発サイクルがもともと12か月程度かかっていたのが、7か月未満となり、40%以上の開発期間短縮に成功。さらに、高価なTURN サーバーからの移行を進めることで、30~40%のコスト削減も見込まれています。
【調理器具メーカー】Traeger Grills
会社の概要
Traeger Grillsは、バーベキューグリルやその関連商品を販売するアメリカの会社です。
抱えていた課題
Wi-Fi対応のペレットグリルを販売していましたが、IoTベンダーがプラットフォームの廃止を発表したため、短期間で新しいプラットフォームに移行する必要に迫られました。そこで、AWS IoT Coreを中心とした新しいIoTプラットフォームを構築することとなりました。
AWS IoT Core導入による効果
AWS IoT Coreを採用した結果、11.1万台のIoTデバイスと70万件のユーザーアカウントを3か月で移行が実現しました。数百万台のデバイスに対応できるスケーラブルなIoTプラットフォームを構築でき、1デバイスあたりのコストを90%削減することに成功しました。
まとめ
AWS IoT Coreの最大の利点は、AWSの豊富なサービスとスムーズに連携できることです。AWS IoT Coreを使えば、AWS上でIoTシステムを簡単に構築でき、IoTシステムの開発期間の短縮やコスト削減、スケーラビリティの向上など、多くのメリットを得られます。また、高いセキュリティも確保されており、さまざまなデバイスと安全な接続が可能です。この機会にAWS IoT Coreの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
また、現在IoTシステムの導入を検討中の方、AWS上でのIoTシステム構築でお悩みの方は、当社までお気軽にご相談 ください。AWS導入の豊富な経験と専門知識を持つ専門家が、御社のニーズにマッチする柔軟なサポートをご提供いたします。
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