最終更新日:2024.10.18

AWS License Managerとは? サービスの概要とライセンス管理の重要性について解説

近年、ソフトウェアの販売形態は、買い切り型(永続ライセンス)からサブスクリプション型が主流になりつつあり、契約形態が多様化しています。それに伴い、利用期限や使用可能なデバイス数などの要因によりライセンス管理も複雑化し、コンプライアンス遵守が求められる中で、ライセンス違反のリスクが増大しています。「AWS License Manager」は、こうした煩雑なライセンス管理を、厳密かつ効率的に行うのに役立ちます。本記事では、AWS License Managerのサービス概要やライセンス管理の重要性、さらにライセンス違反が発生する原因について詳しく解説します。

AWS License Managerとは

まず、AWS License Managerのサービス概要や、料金体系について紹介します。

AWS License Managerは、ソフトウェアのライセンスの過剰使用や期限切れなどの問題を解消して、ライセンス管理をスムーズに行うためのサービスです。ライセンス管理はソフトウェアを利用するうえでの重要な課題であり、誤った管理はコストの増加やコンプライアンス違反につながるリスクがあります。AWS License Managerを使えば、こういったリスクを未然に防ぐとともに管理業務の効率化が可能です。

AWS License Managerの大きな特徴は、複数の大手ベンダーのライセンス管理を、AWS環境内で統一的に行える点です。MicrosoftやIBM、SAP、Oracleなど、さまざまなベンダーのソフトウェアに対応しており、それぞれの複雑化したライセンスルールを一元的に管理できます。これにより、マルチクラウドやハイブリッドクラウド環境で発生しがちなライセンス違反を未然に防ぎ、コストの最適化やコンプライアンスの強化を実現できます。

AWS License Managerの料金について

AWS License Manager自体は、追加料金なしで利用できます。ただし、AWS License Managerを利用する際は、EC2インスタンスなどの計算リソースを使用して、ワークロードを実行するのが一般的です。AWS License Manager以外のAWSサービスに関しては、利用した分だけ課金が行われます。

なぜライセンス管理が重要なのか

続いて、ライセンス管理が重要な理由やライセンス違反のリスク、さらにライセンス違反が発生する原因について解説します。

そもそもライセンス違反とは?

ソフトウェアには、その提供元である企業が定めた使用許諾契約(ライセンス)が存在します。ハードウェアと異なりソフトウェアは無形のリソースであり、そのほとんどが著作権で保護されています。ライセンスとは、著作権を保持している者(ソフトウェア提供元)が定めた「指定された条件のもとでソフトウェアを使用する権利」のことを指しています。

ソフトウェアを利用するときは、提供元が定めるライセンス内容に従わなければなりません。ライセンスでは、多くの場合インストールできるデバイスの台数や使用期限、利用範囲などの条件が定められています。違法コピーや海賊版ソフトウェアの購入や使用も当然ライセンス違反に該当します。ソフトウェアの多くは著作権が設定されており、これを基にライセンス内容が定められています。したがって、ライセンスに違反する行為は著作権侵害にあたり、法律で罰せられることもあります。

ライセンス違反のリスク

ライセンス違反は、著作権法などの法律に抵触する行為であり、刑事罰の対象となる可能性があります。たとえば、企業が意図的に不正コピーを行っていた場合、懲役刑や罰金刑が科される可能性があり、個人では1000万円以下、法人では3億円以下の罰金刑が適用される場合もあります。さらに、提供元から損害賠償を求められるケースもあり、数千万円から数億円規模の賠償金や和解金を支払う事例も報告されています。

また、ライセンス違反が公になれば、「コンプライアンス意識が低い企業」として社会的信用を失うリスクも高まり、取引先や顧客からの信頼失墜は、企業経営にとって致命傷となることも。加えて、不正にコピーされたソフトウェアはメーカーのサポート対象外となるため、セキュリティ上のリスクが高まります。そもそも不正コピーのソフトウェアには、悪意のあるウイルスが仕込まれている危険性もあり、サイバー攻撃によるシステム障害や情報漏えいなどのリスクを増大させてしまいます。

なぜライセンス違反が起こるのか

ライセンス違反が発生する主な理由の一つは、従業員のITリテラシーやライセンスに関する知識不足です。現場でソフトウェアを使用する従業員が、ライセンスの内容やリスクを十分に理解していないと「この程度なら問題ないだろう」という安易な判断でライセンス違反を犯してしまうことがあります。社内で不正コピーが常態化すると、従業員が意識せずにライセンス違反を行ってしまうことも十分に起こりえます。違反が発覚して損害につながった場合、「悪意はなかった」では済まされないため、ITリテラシーやライセンスに関する知識の共有や周知が必要です。

ライセンス違反が起こるもう一つの原因は、ライセンス管理の煩雑さです。従来のソフトウェアは買い切り型が主流でしたが、近年ではサブスクリプション型が主流となり、複数のデバイスで使用できるセカンドライセンスやボリュームライセンスなど、ライセンス形態が多様化しています。この結果、複数のライセンスを適切に管理することが困難になり、意図せずライセンス違反を犯してしまうケースも増えてしまっています。

AWS License Managerを利用するメリット

先述した通り、ライセンス違反は企業にとって大きなリスクとなりますが、近年はライセンスの種類が多様化し、その管理が一層難しくなっています。そこで役立つのがAWS License Managerです。たとえばAWS License Managerを使用することで、Windows Serverのライセンスタイプの変更やAmazon RDSに持ち込まれたライセンスの追跡が可能です。

【参考記事】AWS RDSとは? 導入メリット・料金体系・インスタンスタイプなどを紹介

【参考記事】AWS上にWindows Serverを構築して、リモートデスクトップでアクセスする方法

ここからは、AWS License Managerを利用する際のメリットについて解説していきます。

ソフトウェアライセンスを一元管理できる

AWS License Managerの大きなメリットは、さまざまなベンダーのライセンスを一元管理できる点です。ソフトウェアのライセンス内容はベンダーや製品ごとに異なり、ライセンスの過剰利用や意図しない違反が発生する恐れがあります。しかし、AWS License Managerを使えば、各ソフトウェアのライセンス使用状況をダッシュボード上で一覧として確認できるため、複雑化したライセンスの管理業務を簡素化できます。また、AWS上とオンプレミス環境のライセンスを一括管理することも可能です。ソフトウェアの使用数が増えるほど、煩雑になりがちなライセンス管理業務に伴う負担を大幅に削減できるでしょう。

ライセンス違反の防止につながる

AWS License Managerを使用すると、ソフトウェアのライセンス利用状況をリアルタイムで確認できます。そのため、ライセンス違反が発生してもすぐに気づくことができ、迅速に対応ができるようになります。さらに、ライセンス数を超過しないように制限を設定でき、ライセンス数を使い果たすと、インスタンスの起動を自動的にブロックする機能も用意されています。これによってライセンス違反による法的リスクや経済的損失、さらには業務中断やサービス停止といったリスクを未然に防げます。

コスト削減につながるケースも

ライセンス管理が不十分だと、必要以上にライセンスを購入してしまうケースも珍しくありません。しかし、AWS License Managerを活用してライセンスを一元管理すれば、実際に必要なライセンス数が明確になり、余分なライセンスの削減が期待できます。実際にAWSの公式サイトでも、ニュージーランドのオンライン会計プラットフォーム企業「Xero」がAWS License Managerを導入することで、ライセンス費用を30%削減した事例が紹介されています。

AWS License Manager(ライセンスの追跡、管理、制御)| AWS 新規ウィンドウで開く

AWS License Managerをどのように使うか、3つのユースケース

次に、AWS License Managerを活用した3つのユースケースを紹介します。

ソフトウェアライセンスのコンプライアンス管理

最も一般的な活用法は、ソフトウェアライセンスのコンプライアンス管理です。AWS License Managerでは、「ソフトリミット」と「ハードリミット」の設定を通じて、ライセンスの利用期限やライセンス数が容易に管理できます。ソフトリミットは、ライセンス数が残り少なくなると警告を送信する機能です。たとえコンプライアンス違反のインスタンスが起動しても、Amazon Simple Notification Service (SNS) を介して、管理者やエンドユーザーに通知が送られます。一方、ハードリミットはライセンス数を超えた場合に、対象ソフトウェアの新規インスタンス起動をブロックする機能です。これらの機能を上手く使い分けることで、ライセンス違反を防ぎ、コンプライアンスを維持することができます。

ハイブリッド環境におけるライセンスの一元管理

AWS License Managerは、AWS環境とオンプレミス環境を併用するハイブリッド環境にも対応しています。Systems Managerインベントリを使用することで、オンプレミス環境で実行しているアプリケーションを検知し、ライセンスルールを適用できるため、ハイブリッド環境でのライセンス管理がより効率化されるでしょう。

ライセンスコストの最適化

AWS License Managerを利用すれば、AWSおよびオンプレミス環境でのライセンス使用状況を一元管理し、全体像を把握できます。この統合された情報を基に、不要なライセンスを削減し、コストの最適化を図ることもできるでしょう。

AWS License Managerの導入をご検討の方は当社までお気軽にご相談を

多くの企業がクラウドサービスを導入している現在、ソフトウェア契約形態の多様化に伴ってライセンス管理も複雑化し、ライセンスの過剰購入や違反リスクに悩む企業も増えているのではないでしょうか。ライセンスに関する課題や不安を抱えている場合は、AWS License Managerの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

なお当社は、長年にわたりAWS導入サポートを提供しており、構築・移行・運用フェーズまで幅広く対応しています。AWSプレミアティアサービスパートナーとしての豊富な実績もあり、AWS License Manager導入に関するご相談も承っています。

まとめ

昨今では、ソフトウェアの契約形態が多様化している影響で、ソフトウェアのライセンス管理の重要性がますます高まっています。適切な管理を怠ると、多額の損害賠償のリスクだけではなく、企業の社会的信用を損なう危険性も含んでいます。AWS License Managerを活用し、効率的かつ厳重なライセンス管理を進めていきましょう。AWS License Managerやその他のAWSサービスに関する導入、自社への最適化などにお悩みの方は、お気軽にご相談 新規ウィンドウで開くください。

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