最終更新日:2025.12.17

AWS Backup 完全ガイド|EC2・RDS・S3のデータを守る方法と AWS Backup による自動化・世代管理

AWS Backup 完全ガイド|EC2・RDS・S3のデータを守る方法と AWS Backup による自動化・世代管理

AWS上で重要なデータを扱う以上、障害や誤操作による削除、ランサムウェアなどのリスクから確実に守る仕組みは欠かせません。

しかし、Amazon EC2やAmazon RDS、Amazon S3ごとに個別でスナップショットやバックアップを設定していると、設計や世代管理、監査対応が複雑になりがちです。そこで活用したいのが、バックアップを一元管理・自動化できる「AWS Backup」です。

本記事では、AWS Backupの基本から主要機能、Amazon EC2・Amazon RDS・Amazon S3を守る実践ポイント、運用設計のベストプラクティスまでを整理して解説します。

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AWS Backupとは?クラウド環境のバックアップを自動化する統合サービス

ここでは、Amazon EC2・Amazon RDS・Amazon S3など複数のAWSリソースを対象に、バックアップの取得から保持・コピーまでを自動化し、一元管理できるAWS Backupの概要と役割について解説します。

AWS Backupの概要と特徴

AWS Backupは、複数のAWSリソースに対するバックアップをポリシーベースで一元管理できるフルマネージドサービスです。

従来はAmazon EC2のスナップショット、Amazon RDSの自動バックアップ、Amazon S3のバージョニングなど、サービスごとに個別設定が必要で、設定漏れや保持期間の不整合が起きやすい状況でした。

AWS Backupを利用することで、バックアップ頻度・スケジュール・保持期間・コピー先リージョンなどを一括で定義し、タグやAWS Organizationsを用いて新規リソースにも自動適用できます。

これにより、運用担当者の負荷軽減、ヒューマンエラーの防止、コンプライアンスや内部統制の強化に大きく貢献します。さらに、ジョブ状況の可視化やレポート作成も容易で、組織として統一されたバックアップ管理を実現可能です。

バックアップの必要性とクラウド時代のデータ保護

クラウド環境ではインフラの冗長化はAWS側が担保してくれますが、誤操作による削除や設定ミス、不正アクセス、ランサムウェアなどによるデータ消失リスクは利用者側の責任範囲です。

責任の範囲については以下の記事で詳しくご紹介していますのでご参考ください。

AWSに必要なセキュリティ対策とは? AWSの責任共有モデルの解説

そのため、業務停止を防ぎ迅速に復旧するためのバックアップは不可欠です。AWS Backupを利用すれば、障害対策としての復旧ポイント確保はもちろん、ランサムウェア対策としてのクロスアカウントバックアップやボールトロックも活用できます。

さらに、災害対策(BCP/DR)では別リージョンへのコピーにより、広域障害時にも事業継続を可能にします。オンプレミスでは高コストだった遠隔地保管や長期保存も、AWSでは柔軟かつ低コストで運用でき、クラウド時代の保護基盤として合理的な選択肢です。

AWS Backupでサポートされる主なAWSリソース

AWS Backupは、主要なAWSリソースを幅広く対象にしています。Amazon EC2ではAmazon Elastic Block Store(Amazon EBS)ボリュームのスナップショットが対象となり、アプリケーション整合性を考慮した運用が重要です。

Amazon RDS/Amazon Auroraでは自動バックアップやポイントインタイムリカバリ(PITR)を一元管理でき、DB負荷を踏まえたスケジュール設計が必要です。Amazon S3はバケット単位でバックアップでき、バージョニングやオブジェクトロックと併用することで多重防御を実現します。

ほかにも、Amazon DynamoDB、Amazon Elastic File System、Amazon FSxファミリーなどファイルストレージ系も対応しており、業務システムからファイルサーバーまで幅広いバックアップ運用に活用できます。リソースの特性に合わせた保持期間や頻度の設計が重要です。

AWS Backupの主要機能とできることを整理

ここでは、AWS Backupが備えるバックアップの一元管理・自動化・コスト最適化・監査対応といった主要機能を整理し、複数AWSリソースを効率的かつ安全に保護するためのポイントを解説します。

バックアップの一元管理機能

AWS Backupは、AWS Backupコンソール・AWS CLI・APIを通じて、複数サービスにおけるバックアップ運用を一元的に管理できます。

従来はサービスごとに分散していたバックアップ設定を、スケジュール、保持期間、コピー設定なども含めてまとめて管理できるため、全体の状況把握が容易になります。また、バックアップジョブの成功・失敗や進行状況をダッシュボードから確認でき、失敗時にはAmazon SNSを用いた通知設定も可能です。

これにより、運用チームはバックアップ漏れや失敗に迅速に気付き、リスクを最小化できます。CLI・APIを利用すればIaC(Infrastructure as Code)と統合した管理も実現でき、大規模環境や自動化指向の組織でも柔軟に利用できます。

バックアップポリシーとタグによる自動適用

AWS Backupでは、バックアッププラン・バックアップルール・バックアップボールトが基盤となり、ポリシーベースで運用を統合管理できます。

バックアッププランではスケジュール・保持期間・コピー先リージョンを定義し、ルールとして実行処理をまとめます。その上で、タグを利用することで、対象リソースにタグを付けるだけでバックアップ対象へ自動的に追加される仕組みが構築可能です。

これにより、新しいEC2インスタンスやRDSインスタンスが作成された際も、運用担当者による手動設定が不要になり、設定漏れを防止できます。また、AWS Organizationsと組み合わせれば、マルチアカウント環境でも統一ポリシーを強制し、全社的なガバナンスを強化できます。

ライフサイクル管理とコスト最適化

AWS Backupのライフサイクル管理機能を利用することで、バックアップデータを保持期間に応じてホットストレージ(標準保管)からコールドストレージ(低コスト保管)へ自動的に移行できます。

これにより、長期保管が必要なバックアップでもコストを大幅に削減できます。さらに、アーカイブ層へ移動するタイミングも指定でき、法令遵守や監査要求に合わせた長期保存を低コストで実現可能です。

ライフサイクルポリシーはバックアッププランの一部として設定されるため、リソース追加時にも自動的に適用されます。データ量が多い環境では、ライフサイクルの適切な設計が運用コストに直結するため、保持期間や移行タイミングの定義が重要です。

クロスリージョン・クロスアカウントバックアップ

AWS Backupは、バックアップデータを別リージョンや別アカウントへ自動コピーでき、災害対策(DR)やセキュリティ強化に大きく貢献します。

例えば、広域災害発生時でも、コピー先リージョンに復旧ポイントが存在すれば迅速にシステムを立ち上げられます。また、クロスアカウントコピーを活用すると、攻撃者がアカウントに侵入しても、別アカウント側のバックアップが消されにくくなり、ランサムウェア対策としても有効です。

設計例としては、運用アカウントからセキュリティ専用アカウントへのバックアップコピーや、本番リージョンからDRリージョンへの二重保護などが一般的です。これにより、可用性と安全性を両立したバックアップ基盤を構築できます。

監査・レポート作成機能(AWS Backup Audit Manager)

AWS Backup Audit Managerは、バックアップ設定が企業ポリシーやコンプライアンス要件を満たしているかを自動的に評価・可視化できる機能です。

設定内容やバックアップジョブの実行状況をルールと照らし合わせて継続的にチェックし、不備があれば検出できます。またレポート生成機能により、監査用資料を自動で作成でき、バックアップが設計通りに実施されていることを社内外へ説明する際にも役立つでしょう。

金融・公共・医療など、バックアップの証跡管理が求められる業界では特に有用で、内部統制の強化にもつながります。

AWS Backupで守る主要リソース別の実践ポイント

ここでは、Amazon EC2・Amazon RDS/Aurora・Amazon S3といった主要リソースごとに、AWS Backupを活用した実践的なバックアップ方法や設計ポイント、注意点について詳しく解説します。

Amazon EC2のバックアップとリストア方法

Amazon EC2のバックアップは、実質的にAmazon EBSボリュームのスナップショットをAWS Backup経由で取得する仕組みになります。

スナップショットは増分バックアップのため効率的ですが、データの不整合を防ぐためには、メモリ上のデータをディスクに書き込む(フラッシュする)処理や、インスタンスの停止といった考慮が必要な場合があります。

ただし、AWS Backupの「アプリケーション整合性バックアップ」機能を利用すれば、WindowsインスタンスではVSS (Volume Shadow Copy Service) 、Linuxインスタンスでは専用のスクリプトと連携することで、アプリケーションを停止することなく整合性を確保したバックアップが可能です。

バックアッププランを作成してスケジュールを設定すれば、業務時間帯を避けた定期実行が可能になります。

復元時は、EBSスナップショットから新規ボリュームを作成し、それをEC2インスタンスにアタッチする方法が一般的です。また、似たサービスとしてAmazon Data Lifecycle Manager(DLM)がありますが、DLMはEBSスナップショットに特化した自動化ツールであり、複数リソースを横断管理できるAWS Backupとは役割が異なります。

全社的なガバナンスを考える場合はAWS Backupの利用が適しています。

Amazon RDS/Auroraのバックアップ戦略

Amazon RDSおよびAuroraでは、自動バックアップと手動スナップショットをAWS Backupから一元管理できます。

自動バックアップはポイントインタイムリカバリ(PITR)を可能にし、特定時間の状態に細かく巻き戻す際に有用です。一方、手動スナップショットは保持期限がなく、特定環境の長期保管や移行用途に向いています。

マルチAZ構成の場合、バックアップはスタンバイ側で取得されるため、業務影響を最小化できます。さらに、AWS Backupを使えば定義したバックアッププランに沿ってスナップショットを自動取得し、クロスリージョンコピーを行うことで、広域災害時にも迅速な復旧が可能です。

RPO/RTO要件に応じて、自動バックアップの保持期間とスケジュール、リストア戦略を設計することが重要です。

Amazon S3のバックアップとバージョン管理

AWS Backupは、Amazon S3バケット全体をバックアップ対象として扱うことができ、大量のオブジェクトをまとめて保護したい場合に有効です。

特に誤削除やランサムウェア対策として、S3バージョニングやオブジェクトロックと併用することで多層的なデータ保護が実現できます。ライフサイクルルールと組み合わせれば、旧バージョンを自動的に低コストストレージへ移行し、長期保存のコストを最適化できます。

また、AWS Backupのクロスリージョンコピー機能を使うことで、S3データの災害対策にも対応可能です。長期保存が必要なアーカイブ用途から、運用中データの復元性向上まで幅広く活用でき、S3の特性を最大限活かしたバックアップ設計を行うことが重要です。

運用設計と管理のベストプラクティス

ここでは、AWS Backupを効果的に運用するために欠かせないバックアップ設計の基本方針、復旧テストや監視の重要性、さらにコスト最適化とガバナンス強化のポイントについて解説します。

バックアップ設計の基本方針(RPO/RTOの考え方)

バックアップ設計では、まず RPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点) と RTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間) を明確化することが重要です。

RPOは「どこまで最新のデータを復元する必要があるか」、RTOは「どれだけ早く業務を再開する必要があるか」を示し、これらに応じてバックアップ頻度や保持期間を決定します。

業務システムでは、深夜帯やアクセスの少ない時間帯をバックアップウィンドウとして設定することで、パフォーマンスへの影響を最小限に抑えられます。また、保持期間は法的要件やシステム特性により異なるため、世代数と組み合わせて最適化することがポイントです。

定期実行するバックアッププランと、必要に応じて分離した短期・長期保存ポリシーを併用することで、効率的な運用が実現できます。

復旧テストと運用監視の重要性

バックアップが正常に取得されていても、実際に復旧できなければ業務継続には役立ちません。そのため、定期的なリストアテストは運用設計における必須項目です。
テストでは、復元後のデータ整合性、アクセス権(IAMロールやポリシーが正しく反映されているか)、アプリケーションが正常動作するかを確認します。これにより、想定していたRPO・RTOが実現できるかを検証可能です。

監視については、Amazon CloudWatchでバックアップジョブの成功・失敗をモニタリングし、Amazon EventBridgeで通知や自動アクションをトリガーできます。定期テストと監視体制の構築により、障害発生時の迅速な復旧と運用品質の維持が可能になります。

コスト最適化とガバナンス強化

AWS Backupのコストは、主に「バックアップストレージ利用量」「クロスリージョンコピー時の転送料」「リストアリクエスト」によって構成されます。

不要データの削除やライフサイクル設定によるアーカイブ層への移行は、ストレージ費用を大幅に削減します。また、世代管理の最適化により、無駄なスナップショット増加を防ぐことも重要です。

ガバナンス強化の観点では、AWS Backup Audit Manager が有効です。ポリシー遵守状況を自動チェックし、レポートとして出力することで、内部統制や監査対応が容易になります。特に複数アカウント運用では、共通のバックアップ基準をポリシーとして定義し、統一的に管理することで運用の透明性と安全性を高められます。

まとめ

AWS Backupは、Amazon EC2・Amazon RDS・Amazon S3 など複数リソースを自動で保護し、バックアップ管理の効率化やガバナンス強化を実現する重要なサービスです。

適切なバックアップ設計やライフサイクル管理を行うことで、災害対策やコスト最適化にも大きく貢献します。一方で、RPO/RTOの定義、運用設計、マルチアカウント統制などには専門知識も求められるでしょう。

TOKAIコミュニケーションズでは、こうした課題を包括的に支援する AWS運用管理サービス を提供しています。バックアップ運用の最適化やAWS環境の安定稼働を目指す方は、ぜひサービスページをご覧ください。また、運用内製化を支援する資料も公開中です。

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