多くの企業がDX推進や働き方改革の一環として、システムのクラウド化を加速させています。その際議論の的となるのが、認証基盤である「Active Directory(AD)」の扱いです。
既存のオンプレミス環境を維持すべきか、AWSへ移行すべきか、その選択は後の運用効率とセキュリティにつながります。
本記事では、AWSが提供する「AWS Directory Service」の基礎知識から、主要なサービスの違い、そして自社に最適な移行・連携パターンについて解説していきます。
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目次
AWS Directory Serviceの基礎知識と主要3サービス
AWS Directory Serviceは、クラウド上でのディレクトリ構築・運用を支援するマネージドサービスです。ここでは、本サービスの仕組みと、主要な3つのサービスタイプについて解説します。
AWS Directory Serviceとは?Active Directoryをクラウドで利用する仕組み
AWS Directory Serviceとは、AWS環境でユーザー情報や権限管理を行うためのマネージド型ディレクトリサービスです。Active Directoryをベースにした構成が可能で、既存のオンプレミスのADと連携する機能も備えています。
本サービスを利用する最大のメリットは、インフラ運用の自動化にあります。物理サーバーの管理、OSのパッチ適用、バックアップ、冗長化といった保守作業をAWSが代行するため、運用担当者の負担が軽減可能です。
これにより、本来注力すべきユーザーIDのライフサイクル管理や、セキュリティポリシーの策定といったコア業務にリソースを集中させられます。
【徹底比較】AWS Managed Microsoft AD / AD Connector / Simple ADの違い
AWS Directory Serviceには、企業の規模や要件に応じて選べる3つの主要なサービスがあります。それぞれの特徴と適した利用シーンは以下の通りです。
- AWS Managed Microsoft AD:Window ServerのADをベースとしたマネージドサービスです。オンプレミスのADとの信頼関係構築や高度なGPO管理が可能ですが、管理上の制約によりDomain Adminsなどのドメイン管理者権限は付与されません。
- AD Connector:認証リクエストをオンプレミスのADへ転送するプロキシ(中継)サービスです。AWS側にデータを保存せず、既存のIDをそのまま利用したい場合に適しています。
- Simple AD:Samba 4を利用した互換機能版です。コストを抑えたい小規模環境(5,000ユーザー未満)向けですが、機能に制限があります。
Active Directoryのクラウド移行・連携における3つの主要パターン
Active Directoryをクラウドへ移行・連携させる方法は一つではありません。企業のセキュリティポリシーや既存資産の状況、目指すべき将来像によって最適なアーキテクチャは異なります。
ここでは、多くの企業で採用されている主要な3つの移行・連携パターンについて、それぞれの特徴とメリットを解説します。
パターン①:AWS Managed Microsoft ADによるクラウドへの完全移行・新規構築
オンプレミスのADサーバーを廃止し、AWS上にアイデンティティ管理基盤を完全に移行、または新規システム用に構築するパターンです。
ハードウェアの保守期限(EOS)からの解放を目指す企業や、クラウドネイティブな環境を構築したい場合に最適です。
移行プロセスとしては、既存ADからユーザー情報をエクスポートし、AWSへ取り込む流れとなります。また、本サービス独自の強みとして「マルチリージョンレプリケーション」機能があります。
これは、自動的に他のリージョンへディレクトリデータを複製する機能です。これにより、万が一メインのリージョンで障害が発生しても、別リージョンで認証を継続できるため、極めて高いBCP(事業継続計画)対策を実現できます。
パターン②:オンプレミスのADとAWS環境の信頼関係によるハイブリッド連携
オンプレミスとAWSの双方にドメインコントローラを配置し、ネットワークで接続した上で「信頼関係」を結ぶパターンです。
既存のオンプレミスのADをマスターとして維持しつつ、AWS上のリソースも利用したい大規模組織に適しています。信頼関係を結ぶことで、ユーザーは普段利用しているオンプレミスのIDとパスワードで、AWS上のリソースへシームレスにアクセスできます。
段階的にシステムをクラウドへ移行する場合や、全社的なガバナンスを維持したまま特定部門だけAWSを利用させたい場合など、柔軟な運用設計が可能な点が大きな強みです。
パターン③:AD Connectorを用いた既存ADの認証情報の有効活用
AWS側にはディレクトリデータベースを持たず、認証が必要なタイミングでリクエストをオンプレミスのADへ転送するパターンです。
AWS上にデータを複製したくない場合や、Amazon WorkSpacesなどのサービスを迅速に利用開始したい場合に有効です。AD Connectorはあくまで中継役であるため、ディレクトリ情報の同期ズレや競合といったトラブルが発生しません。
設定も比較的容易で、既存のAD環境に手を入れることなく、クラウドサービス利用時の認証を既存基盤に統合できます。ユーザーにとってもパスワード管理が一本化されるため、利便性を損なうことなく導入できます。
AD連携を成功させるためのネットワーク設計と注意点
ADのクラウド連携において、ディレクトリサービスの選定以上に重要なのがネットワーク設計です。認証はすべての業務の入り口となるため、その通信経路には高い信頼性が求められます。
ここでは、AD連携を成功させるために不可欠な通信インフラの選定と、運用前に確認しておくべきコストやセキュリティの勘所について解説します。
AD連携の肝となる「専用線・VPN」と名前解決(DNS)の重要性
ハイブリッド構成やAD Connectorを利用する場合、オンプレミスとAWS間の通信品質がシステムの使い勝手を左右します。インターネットVPNでも接続は可能ですが、認証遅延や切断リスクを避けるため、帯域確保型の専用線接続サービス「AWS Direct Connect」の利用が推奨されます。
また、AD連携の最大の難所が「名前解決(DNS)」です。AWSとオンプレミスでドメイン解決ができないと認証は失敗します。この複雑な課題への解決策として有効なのが「Amazon Route 53 Resolver」です。
これを利用し、フォワーディングルールを設定することで、DNSクエリを適切に転送・解決できるようになり、安定した認証環境を構築できます。
運用開始前に確認すべきコストとセキュリティの検討ポイント
導入検討時には、月額利用料だけでなく、運用に伴う間接的なコストやセキュリティ設定の複雑さも考慮する必要があります。
コスト面では、AD間のデータ複製や認証トラフィックに伴う「データ転送コスト」が発生します。特に大規模環境で頻繁な同期を行う場合は試算が必須です。セキュリティ面では、AD通信に必要なポート(LDAP, Kerberos, DNS等)をセキュリティグループやファイアウォールで適切に開放する必要があります。
許可すべき通信要件は多岐にわたり、設定ミスはセキュリティホールや接続障害に直結するため、AWSのベストプラクティスに基づいた設計が求められます。
AWSへのAD移行・連携ならTOKAIコミュニケーションズにお任せください
Active Directoryのクラウド移行は、サーバー構築だけでなく、ネットワーク、セキュリティ、運用設計といった多角的な専門知識が必要です。自社リソースだけでこれらを完遂するのは容易ではありません。
ここでは、ネットワークとクラウドの両面に精通したTOKAIコミュニケーションズが提供する支援サービスについて紹介します。
ネットワークから基盤構築までワンストップで支援する強み
TOKAIコミュニケーションズは、通信キャリアとしての強固なネットワーク基盤と、システムインテグレーターとしての豊富なクラウド構築実績を併せ持っています。
AD連携において最も重要な「切れないネットワーク」と「セキュアなディレクトリ基盤」をワンストップで提供できる点が特長です。回線調達からAWS接続(AWS Direct Connect)、そしてAWS Directory Serviceの設計・構築・移行までを一括でサポートします。
窓口を一本化することで、ベンダー間の調整コストを削減し、整合性の取れた安定した認証基盤をスピーディーに構築いたします。
AWS プレミアティアサービスパートナーとしての豊富な導入実績
当社は、AWSパートナーネットワークにおいて最上位ランクである「AWS プレミアティアサービスパートナー」に加え、移行における高い技術力を証明する「AWS 移行コンピテンシー」認定も取得しています。
これまでに600件以上のAWS導入支援を行い、社内には500名以上のAWS有資格者が在籍しています。Active Directoryを含む基盤構築の経験も豊富にあり、お客様ごとのセキュリティ要件や運用ルールに合わせた最適なアーキテクチャをご提案可能です。
まとめ
本記事では、AWS Directory Serviceの概要から、ADをクラウドで活用するための3つのパターン、そして導入時の注意点について解説しました。
クラウド移行において認証基盤の設計は、その後の拡張性やセキュリティ強度を決める重要な要素です。しかし、ネットワーク設計を含めた全体最適化には専門的な知見が欠かせません。
「自社にとって最適な連携パターンがわからない」「移行のリスクを最小限に抑えたい」とお考えの場合は、ぜひ一度当社にご相談 ください。プロフェッショナルが最適な解決策をご提案いたします。
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