導入効果
- マルチAZ構成によりシステムインフラの冗長化を実現
- インフラメンテナンス時のサービス停止を回避
- 監視・自動化ツールの導入により運用負荷が大幅に軽減
導入背景
株式会社中日新聞社は、日本全国に4つの本社と3つの支社を配置し、中日新聞や東京新聞など日刊新聞の印刷・発行を行っている。近年では従来の新聞社の枠組みにとらわれない取り組みにも注力しており、読者からの取材リクエストに応える特別取材チーム「Your Scoop(ユースク)」を設置。2022年秋には、愛・地球博記念公園内に開業予定の「ジブリパーク」の運営にも関わる計画だ。同社では、1966年に生涯学習の拠点として中日文化センターを開設して以来、東海北陸の13の文化センターで数多くの学習講座を開講しているが、同センターの会員管理システムのデータベースが稼働している物理サーバの保守切れを契機に、システムインフラをアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行することを決定した。その際に協力を仰ぐITパートナーとして選定したのが、TOKAIコミュニケーションズだ。
課題
インフラ移行とサーバ冗長化が課題に
株式会社中日新聞社が情報システムを統括する中日文化センターでは、会員情報の管理や会員からの予約を処理する会員管理システムをオンプレミス環境の物理サーバで稼働させていたが、2020年5月にデータベース用サーバの保守サポート終了を控えていた。サーバOSであるWindows Server 2008 R2の延長サポートも2020年1月に終了する予定で、Windows Server 2016へのアップグレード対応にも迫られていた。当時の状況について、中日文化センターの情報システムを担当する経営企画室 経営システム部の後藤雅史氏は、次のように説明する。
「サーバOSのアップグレードも課題でしたが、真っ先に対応を考えなければならなかったのが、データベース用サーバのリプレイスでした。そのタイミングで、対応できていなかったサーバの冗長化構成も実現したいと考えていました」。
これまでサーバが冗長化されていなかったことで、建物全体の定期停電時やネットワーク機器の更新の際にはサーバを一旦停止する必要があり、Webサイトからの講座申し込みも止めなければならなかったからだ。
「以前は書面による講座申し込みが多かったのですが、近年ではWebサイトからの申し込みが増えており、サーバの停止は多くのお客様にとってサービスの低下に直結する課題でした。サービスの継続性をこれまで以上に高めるためにも、この課題を何とか解決したいと考えていました」(後藤氏)。
解決策
コストメリットからAWS採用を決定
サーバのリプレイスにあたり、従来通りオンプレミスにするか新たにクラウドを利用するかを検討したが、この点について当時経営企画室で移行プロジェクトに携わったIT・電子メディア審議室の田中清子氏は次のように説明する。
「サーバの冗長化をオンプレミスで実現する場合、コストがかなり高額になることが想定されました。一方、私たちの移行プロジェクトと時期を同じくして、全社的にクラウド基盤を推進していこうという取り組みが始まり、2020年2月の完成を目指してクラウド利用のためのガイドライン策定が進められていました。このような背景により、2019年の夏頃から社内で開催されていたAWSの営業担当者による相談会に私たちも参加し、クラウドやAWSに関する様々な知識を得ることができました。その後、クラウド利用ガイドライン策定チームがAWSを採用する方針を固めつつあったことも判断材料となり、私たちもAWSを利用することに決定しました。AWSは多種多様な企業での導入実績が豊富にあります。懸案だったサーバ環境の冗長化についても、コストを抑制しつつオンプレミスよりも容易に実現できるということが決め手になりました。プロジェクトを進める上で、信頼のおけるITパートナーとしてAWSから紹介を受けたのがTOKAIコミュニケーションズでした」。
導入効果
マルチAZ構成で可用性を向上
これまで同社では、他部署でお客様向けのサービスをAWSで利用するケースはあったものの、全社で利用を推進していたシステム基盤上に構築するのは今回が初めてだったという。中日文化センターのインフラで稼働するアプリケーションの開発や運用は社外のシステム開発会社に依頼しているが、AWS環境の構築を安心して任せられるITパートナーが何としても必要だった。
「"TOKAIコミュニケーションズなら実績も豊富で、お客様の要望にも柔軟に対応してくれる。アフターフォローもしっかりしていて、システム運用も安心して任せられる"ということで、AWSの営業担当者より紹介を受けました。手厚いサポートが期待できる点が、AWSの導入が初めてとなる私たちにとって大きな安心感が得られるポイントのひとつでした」(後藤氏)。
田中氏は、AWS環境の構築時にTOKAIコミュニケーションズのスキルの高さを十分に感じることができたと強調する。
「環境構築に際してTOKAIコミュニケーションズが設計した構成は、私たちのニーズをしっかりくみ取ってくれていました。複数のアベイラビリティゾーン(AZ)に分けてシステムを配置するマルチAZ構成を利用した冗長化により、可用性の向上を実現できます」(田中氏)。
AZとは、複数のデータセンターで構成された論理的なデータセンターのことである。複数のAZを利用するマルチAZ構成により、あるAZで障害が発生しても正常なAZで稼動を継続しシステムの可用性を高めることができる。こうして同社は、中日文化センターの新たなシステムインフラとしてAmazon EC2を導入。既存のOracleデータベースはAmazon RDS for Oracleへと移行した。稼働開始後の運用管理業務を軽減するために、TOKAIコミュニケーションズが提供するAWS運用管理サービスも採用。AWS環境の監視・自動化ツールEMAの専用ポータルを介して、Amazon EC2やAmazon RDS for Oracleの稼働監視やバックアップ状況を確認できるようにした。実際の監視業務はEMAが自動で行い、万一問題が発生した場合にはアラート通知が送られてくる仕組みだ。また、EMAの管理ポータルは利用者側でいつでもモニタリングすることができる。さらに、AWS利用料の支払い処理をクレジットカード支払いではなく日本円建ての請求書払いにするために、AWSリセールサービスも採用することにした。中日文化センターのWebサイトは不特定多数のユーザがアクセスするため、セキュリティ強化を目的としてシステム移行と同時に WAFサービスであるWafCharmを採用した。WafCharmは、Webへの攻撃パターンをAIが学習して新たな攻撃を発見し、シグネチャを常時更新していく次世代のWAFサービスである。こうして新たなシステム環境構築は、2020年11月にカットオーバーした。
今後の展望
可用性が大幅に向上し運用負荷の削減も実現
AWS環境の稼働開始から現時点で1年弱経過しているが、冗長化の実現でシステムインフラの可用性が大幅に向上したと後藤氏は説明する。
「AWSへのシステム移行により、事務所の計画停電などの影響を受けずにサービスを継続提供することが可能になりました。以前はWebサイト上でメンテナンスによるシステム停止を案内していましたが、システム停止がなくなったのでそのような告知の手間も大幅に削減できました」。
ハードウェアの管理が不要になったことも非常に大きなメリットだったが、中日文化センターの会員管理システムを利用する社員からはシステムのレスポンスが速くなったという声も寄せられ、想定外のメリットも得られたという。
「物理サーバの管理から解放され、私たちシステム管理者にとっては運用負荷の大幅な削減につながりました。また、Amazon EC2はマシンスペックを柔軟に調整できるため、アクセスが増えてもすぐに対応できます。お客様や社員には利便性の向上というメリットを提供できるようになったと考えています」(田中氏)。
全社的に取り組んでいたクラウド利用ガイドラインの策定も完了した同社だが、今後もさらにAWS環境の利用を促進していきたい考えだ。
「私たちのAWS環境は稼働開始からまだ1年弱です。当面はTOKAIコミュニケーションズのAWS運用管理サービスの利用を通じて、AWSに関するノウハウを社内に蓄積していきたいと考えています。そして今後社内でAWSの利用がさらに進めば、当社だけでは対応できない局面が出てくることも容易に想像できます。その際には改めて心強いITパートナーとして、TOKAIコミュニケーションズの協力を仰ぎたいと思います」(後藤氏)。
- 本導入事例の内容は制作時(2022年6月)のものであり、変更されている可能性があることをご了承ください。
- アマゾン ウェブ サービス、AWS、Amazon VPC、Amazon S3、Amazon CloudWatch、Amazon SNS、Amazon EC2、Amazon RDS、AWS CloudTrail、AWS WAFおよびAWS IAMは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
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Company Profile
株式会社中日新聞社
- 設立
- 1942年9月
- 所在地
- 名古屋市中区
- 事業内容
- 日刊新聞(中日新聞/東京新聞/北陸中日新聞/日刊県民福井/中日スポーツ/東京中日スポーツ)や書籍の発行、中日文化センターの運営 他
- URL
- https://www.chunichi.co.jp/