
近年、多くの企業がサーバーレスアーキテクチャへの移行を進めています。その中核を担うサービスとして注目されているのが、AWSが提供する「AWS Lambda」です。
「サーバーの管理が不要でコストも削減できると聞いたけれど、具体的に何ができて、どんなメリットがあるのか分からない」
「自社のビジネスにどう活用できるのか、具体的な事例を知りたい」
この記事では、そのような疑問をお持ちの方のために、AWS Lambdaの基本的な概念から、料金体系、メリット・デメリット、そして具体的な活用事例までを網 羅的に解説します。この記事を読めば、AWS Lambdaの全体像を掴み、自社での活用を具体的に検討できるようになるでしょう。
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目次
AWS Lambdaとは?初心者にもわかる基本を解説
AWS Lambda(ラムダ)とは、AWSが提供するサーバーレスコンピューティングサービスです。通常、プログラムを動かすにはサーバーを準備し、OSやソフトウェアの管理・運用を行う必要があります。しかし、AWS Lambdaを利用すれば、サーバーの存在を意識することなくプログラムコードを実行できます。
この「サーバーレス」という概念は、開発者がインフラの管理から解放され、アプリケーションの開発そのものに集中できる環境を実現します。
FaaS(Function as a Service)との関係
AWS Lambdaは、「FaaS」と呼ばれるサービスモデルの一種です。これは、特定の機能(Function)を、何らかのイベント(トリガー)をきっかけに実行するという特徴を持ちます。
イベント(トリガー)の例
- S3バケットに画像ファイルがアップロードされた
- API Gatewayに特定のリクエストが届いた
- 毎日午前9時になった
実行される機能(Function)の例
- アップロードされた画像のサイズを自動で変更する
- リクエストに応じてデータベースから情報を取得する
- 定時にバッチ処理を実行する
このように、AWS Lambdaは「〇〇が起きたら、△△を実行する」というシンプルな仕組みで、様々な処理を自動化できる強力なツールです。
サーバを立てずにプログラムを実行できる「AWS Lambda」とは? | TOKAIコミュニケーションズ AWSソリューション
なお、TOKAIコミュニケーションズは、AWSが提供している「AWS Lambdaサービスデリバリープログラム認定」を取得しています。これは、AWS Lambdaの深い知識や豊富な導入経験が評価されたもので、当社は豊富な実績に裏打ちされたノウハウを活用し、AWS Lambda導入や構築に関する支援やコンサルティングを行っています。
当社が取得しているAWS認定について、詳しくはこちらのページで紹介しています。
AWS Lambdaサービスデリバリープログラム認定を取得 | TOKAIコミュニケーションズ AWSソリューション
AWS Lambdaの料金体系
AWS Lambdaの大きな魅力の一つが、そのコスト効率の高さです。料金は、プログラムが実行された時間と回数に基づく完全な従量課金制です。
料金は、主に以下の2つの要素で決まります。
- 1.
リクエスト数: プログラムが実行された回数です。
- 2.
コンピューティング時間: プログラムが実行されていた時間(ミリ秒単位)と、割り当てられたメモリ量に応じて課金されます。
無料利用枠
- リクエスト: 毎月100万件まで無料
- コンピューティング時間: 毎月400,000 GB秒まで無料
AWS Lambdaには毎月無料利用枠が設定されています。
小規模なアプリケーションや、個人の開発であれば、この無料枠の範囲内でおさまるケースも少なくありません。そのため、低リスクでサーバーレス開発を始めることができます。
※最新の料金体系や詳細な計算方法については、公式サイトをご確認ください。
AWS Lambdaのメリット・デメリット
便利なAWS Lambdaですが、万能というわけではありません。メリットとデメリットを正しく理解し、用途に合わせて活用することが重要です。
メリット
- サーバー管理が不要
サーバーの構築、OSのアップデート、セキュリティパッチの適用といった運用・保守業務から解放されます。 - コスト削減
プログラムが実行されている時間だけ課金されるため、常にサーバーを起動しておく場合に比べてコストを大幅に削減できます。 - 高いスケーラビリティ
アクセスが急増した際も、AWSが自動で処理能力を調整(スケール)してくれます。開発者が手動でサーバーを増強する必要はありません。 - 開発サイクルの高速化
インフラ管理の手間が省けるため、開発者はアプリケーションのロジック開発に集中でき、サービスを素早く市場に投入できます。
デメリット・注意点
- 実行時間の制限
1つの処理(関数)を実行できる時間には上限があります(最大15分)。長時間の処理には向いていません。 - コールドスタート
長時間実行されていない関数が最初に呼び出される際、起動に通常より少し時間がかかることがあります。これを「コールドスタート」と呼び、ミリ秒単位の応答速度が求められる処理では注意が必要です。 - 複雑な処理の管理
多数のLambda関数が連携する複雑なシステムになると、全体の管理やデバッグが難しくなる可能性があります。
AWS Lambdaのユースケース
ここでは、AWS Lambdaがどのような場面で利用されているのか、ユースケースをご紹介します。
リアルタイムのファイル処理
ユーザーが画像や動画をAmazon S3(AWSのストレージサービス)にアップロードしたのをきっかけに、AWS Lambdaを起動。自動でサムネイル画像を生成したり、動画を様々なフォーマットに変換したりします。
これにより、ユーザーがファイルをアップロードすると即座に必要な処理が実行されるため、待ち時間が短縮されます。サーバーを常時稼働させる必要がなく、処理量に応じたコストで済みます。
Webサイトのバックエンド処理
Webサイトのフォームからの問い合わせや、ユーザー登録のリクエストをAmazon API Gatewayで受け付け、その情報をAWS Lambdaで処理。データベースへの登録や、サンクスメールの自動送信などを行います。
これにより、サーバーを意識することなく、Webサイトに必要なバックエンド機能を構築できます。アクセスが集中する時間帯でも自動でスケールするため、安定したサービス提供が可能です。
データ連携・バッチ処理の自動化
毎日深夜1時にAWS Lambdaを定期実行し、複数のデータベースから売上データを収集・集計。その結果を分析用のデータウェアハウスに保存します。
その結果、これまで手動や専用のバッチサーバーで行っていた定型業務を自動化でき、サーバーの運用コストを削減し、人的ミスを防ぐことができます。
AWS Lambdaの活用事例
最後に、AWSの公式ホームページで公開されている、AWS Lambdaの導入事例をご紹介します。今回は、AWS Lambdaを活用して成果を上げたiRobotやスクウェア・エニックスの実例をピックアップしました。他社の成功事例は、これからAWS Lambdaの活用を行う方の貴重な参考資料になるでしょう。
iRobot
iRobot社の事例では、以下のような課題と解決策が紹介されています。
従来抱えていた課題
iRobot社は、掃除機ロボット「Roomba」の販売開始後に利用者数が急増し、規模が拡大したことでさまざまな問題が発生していました。特にECモールでのセール時に大量販売した後、多くのユーザーがiRobot HOME アプリケーションを使用するようになり、大量のトラフィックが発生しました。急増する需要に当初構築されたパブリッククラウド環境が対応できなくなったため、迅速にスケールできる直接制御可能なソリューションの導入が急務となっていました。
AWS Lambdaで実現したこと
Wi-Fi接続タイプの新型「Roomba」を操作するWebアプリケーションの運用にあたり、iRobot社は約25種類のAWSサービスを活用しています。中心となるのは「AWS IoT」です。AWS IoTを用いて数十億台のデバイスとAWSやその他のエンドポイント間で数兆件のメッセージを処理しています。
さらに「AWS Lambda」を活用して、iRobotアプリケーションの裏側で動作するサーバーレスバックエンドに関数ベースのイベント指示を提供する自動応答システムを構築。このシステムにより、iRobotアプリケーションは効率的かつ迅速に動作するようになりました。
スクウェア・エニックス
スクウェア・エニックス社が展開するMMORPG『ドラゴンクエストⅩ』における課題とAWS Lambdaを使った解決策は以下のとおりです。
従来抱えていた課題
『ドラゴンクエストⅩ』では、ゲーム内でユーザーが撮影した写真をポータルサイトや専用アプリで閲覧できる機能を提供しています。撮影した写真はサーバー上でサムネイル作成や加工処理される仕組みとなっており、多くのユーザーに利用されていました。しかし、クリスマスや大みそかなどのイベント時に写真撮影が集中し、画像処理が追いつかない事態に。ユーザーが撮影した写真を確認できるまでに3~4時間の遅延が発生していました。
AWS Lambdaで実現したこと
AWS Lambdaの導入により、かつて3~4時間かかっていた画像処理が今では10数秒で完了しています。年間に数回しか発生しないトラフィックのスパイクに対応するため、オンプレミスサーバーの増設ではなく、無制限にスケールアップ可能なAWS Lambdaへの移行が選ばれました。画像処理機能をAWS Lambdaで動作させ、オンプレミスサーバーと連携する設計を採用したことで、1分間に最大18,000枚の画像を数秒から10数秒で処理できるようになりました。
詳しく知りたい方は、AWS公式ページ よりご確認ください。
まとめ
AWS Lambdaは、高速開発やコスト削減の観点からも、サーバーレスアーキテクチャ構築において非常に便利なサービスです。特性や制限を踏まえて適切に活用することで、AWS Lambdaのメリットを最大限に享受できるでしょう。
なお、TOKAIコミュニケーションズでは、AWS Lambdaを活用した多数のシステムやWebアプリケーションの構築実績があります。これらの豊富な経験をもとに、「AWSサーバーレスアプリケーション開発サポート」をご提供しています。サーバーレス環境でのアプリケーション開発をご検討の方は当社までお気軽にご相談 ください。
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