
企業のDX推進が急速に進む中、サーバー選択は事業成長の基盤となる重要な決断です。Amazon Web Services(AWS)は拡張性と柔軟性に優れた一方で、従来のレンタルサーバーは手軽さとコストパフォーマンスが魅力的です。
しかし、「どちらが自社に適しているのか判断できない」「技術要件と予算のバランスが分からない」と悩む担当者も少なくありません。
適切でないサーバー選択は、将来的な拡張時の移行コストや運用負荷の増大につながるリスクがあります。
そこで本記事では、サーバー選択で迷っているIT担当者様が自信を持って決断できるよう、以下の点を詳しく解説します。
- AWSとレンタルサーバーの根本的な違い
- 【料金・性能・機能】3つの軸での詳細比較
- セキュリティ・拡張性の観点からの比較分析
- 導入成功事例と失敗を避けるための注意点
自社の要件に最適なサーバー環境を選択し、安心してシステム構築プロジェクトを進められるように、是非最後までお目通しください。
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目次
AWS vs レンタルサーバー あなたに適したサーバーはどっち?
サーバー選択で迷っている方のために、簡単な判断フローをご用意しました。
Q1. 月間アクセス数は?
- 1万PV未満 → レンタルサーバー推奨
- 1万〜10万PV → 要件により判断
- 10万PV以上 → AWS推奨
Q2. サーバー管理の知識は?
- 初心者レベル → レンタルサーバー推奨
- 中級者以上 → AWS推奨
Q3. 将来の拡張予定は?
- 現状維持 → レンタルサーバー推奨
- 大幅拡張予定 → AWS推奨
AWSとレンタルサーバーの基本的な違い
まず、それぞれのサーバーがどのような仕組みで提供されているのか、基本的な概念から理解していきましょう。
AWSのサーバーサービスとは
AWSのサーバーサービスは、Amazon Web Servicesが提供するクラウドサーバーサービスです。仮想化技術を使用して物理サーバーを論理的に分割し、ユーザーに専用の仮想サーバー環境を提供します。
【主な特徴】
- 従量課金制による柔軟な料金体系
- 豊富なサービス(200種類以上)の組み合わせが可能
- グローバルなインフラによる高い可用性
- スケーラビリティ(拡張性)の高さ
レンタルサーバーとは
レンタルサーバーは、サーバー事業者が用意した物理サーバーの一部をレンタルするサービスです。共有型、専用型、VPS型の3種類に大別されます。
【主な特徴】
- 月額固定料金による予算管理のしやすさ
- 事業者による運用・保守サポート
- 比較的簡単な導入・管理
- 初期費用の発生(サービスにより異なる)
根本的な違いのまとめ
AWSとレンタルサーバーの違いを簡単にまとめると、以下の表のようになります。
項目 | AWS | レンタルサーバー |
---|---|---|
提供形態 | クラウド(仮想化) | 物理サーバーの共有/専用 |
料金体系 | 従量課金制 | 月額固定制 |
管理方式 | ユーザー管理 | 事業者管理(一部) |
拡張性 | 高い | 制限あり |
詳細比較:機能・料金・性能
具体的な数値とデータを用いて、AWSとレンタルサーバーの実際のコストパフォーマンスと機能面での違いを詳しく比較していきます。
料金比較(月額換算)
まずは料金の比較についてです。
AWS(EC2の場合)
Amazon EC2の代表的なインスタンスタイプの料金例をご紹介します。利用時間に応じた従量課金制のため、実際の使用量により費用が変動します。
- 小規模サイト(t3.micro): 約1,000円〜2,000円/月
- 中規模サイト(t3.medium): 約4,000円〜6,000円/月
- 大規模サイト(c5.large): 約8,000円〜15,000円/月
レンタルサーバー
一般的なレンタルサーバーサービスの料金体系です。月額固定制のため、予算管理がしやすいのが特徴です。
- 共有サーバー: 300円〜1,500円/月
- VPS: 1,000円〜5,000円/月
- 専用サーバー: 10,000円〜50,000円/月
初期費用の比較
- AWS:0円
- レンタルサーバー:1,000円〜10,000円(サービスにより異なる)
AWSとレンタルサーバーの性能・機能比較
比較項目 | AWS | レンタルサーバー(共有) | レンタルサーバー(専用・VPS) |
---|---|---|---|
通信速度 | 〇〜◎ | △ | ◎ |
カスタマイズ性 | ◎ | × | △ |
スケーラビリティ | ◎ | × | △ |
Root権限 | 〇 | × | 〇 |
SLA保証 | 0.9999 | 0.999 | 0.9999 |
サポート品質 | 有償で高品質 | 標準サポート | 標準〜高品質 |
サービス提供形態の違い
AWSの大きな特徴として、ユーザーの管理範囲によって異なるサービス形態を選択できる点があります。
AWSは、利用するサービスによってSaaS・PaaS・IaaSの3つに分類されます。
SaaS(Software as a Service)
- ユーザー管理領域:データのみ
- 提供例:Amazon WorkSpaces
PaaS(Platform as a Service)
- ユーザー管理領域:データ、アプリケーション
- 提供例:AWS Lambda、Elastic Beanstalk
IaaS(Infrastructure as a Service)
- ユーザー管理領域:データ、アプリケーション、OS、ミドルウェア
- 提供例:Amazon EC2、Amazon RDS

用途別の選び方とおすすめケース
実際のビジネスシーンでは、どのような場面でどちらのサーバーを選ぶべきでしょうか。具体的な事例とともに適用場面を詳しく解説します。
AWSが適している場面
変動の激しいアクセスや高い可用性が求められるビジネス用途では、AWSの柔軟性が大きなメリットとなります。
企業サイト・ECサイト
- アクセス変動が大きいECサイトや季節性ビジネス
- 高い可用性が必要な企業の公式サイト
- グローバル展開を予定している事業
開発・技術要件
最新の技術スタックや特殊な開発環境が必要な場合、AWSの豊富なサービス群が強力な武器となります。
- マイクロサービスアーキテクチャの採用
- AI・機械学習機能の活用
- ビッグデータ分析の実装
【事例】
レンタルサーバーが適している場面
安定性とコストパフォーマンス、運用の手軽さを重視する場合は、レンタルサーバーが最適な選択となります。
小規模サイト・ブログ
- 個人ブログや小規模企業サイト
- アクセス数が安定しているサイト
- 予算を抑えたいスタートアップ
運用面の考慮
技術リソースや運用体制に制約がある場合、レンタルサーバーの運用サポートは大きなメリットとなります。
- IT人材が不足している組織
- 安定した月額費用で運用したい場合
- すぐに運用開始したい急ぎのプロジェクト
【適用例】
- コーポレートサイト(月間1万PV程度)
- 地域密着型ビジネスのWebサイト
- 個人事業主のポートフォリオサイト
具体的な選択基準
要件 | AWS | レンタルサーバー |
---|---|---|
月間PV数 | 10万PV以上 | 10万PV未満 |
予算(月額) | 柔軟な予算 | 固定予算重視 |
技術スキル | 中級者以上 | 初心者OK |
拡張予定 | あり | なし |
セキュリティ要件 | 高い | 標準的 |
セキュリティ・パフォーマンス比較
企業のシステム選択において、セキュリティと性能は最も重要な判断要素です。両者の具体的な違いを詳しく分析します。
セキュリティ対策
AWSのセキュリティ
世界最高水準のセキュリティインフラを提供するAWSですが、ユーザー側での適切な設定と管理が重要になります。
- 責任共有モデル:インフラはAWS、アプリケーションはユーザーが管理
- 多層防御:AWS WAF、AWS Shield、Amazon GuardDuty等の専用サービス
- コンプライアンス:SOC、PCI DSS、ISO27001等に準拠
- 暗号化機能:保存時・転送時の両方に対応
レンタルサーバーのセキュリティ
事業者による統一的なセキュリティ管理により、ユーザーの負担を軽減しながら基本的な安全性を確保します。
- 基本セキュリティ:事業者による標準的な対策
- 共有環境のリスク:他ユーザーの影響を受ける可能性
- 限定的なカスタマイズ:セキュリティ設定の自由度が低い
- 事業者依存:セキュリティ更新は事業者に委託
パフォーマンス特性
サイトの表示速度やシステムの応答性は、ユーザーエクスペリエンスに直結する重要な要素です。
通信速度・レスポンス
- AWSサーバー:グローバルCDNにより世界中で高速
- レンタルサーバー:国内の場合は安定、海外からは遅延
可用性・信頼性
システムの安定稼働は事業継続に直結するため、SLA(サービス品質保証)の内容を正しく理解することが重要です。
- AWSサーバー:99.99%のSLA、自動バックアップ
- レンタルサーバー:99.9%程度、事業者による運用
導入時の注意点と成功事例
実際の導入プロジェクトでは、技術的な課題だけでなく、組織運営や予算管理の観点からも注意すべきポイントがあります。
AWS導入時の注意点
AWS導入にあたっては以下の点にも注意しましょう。
技術的な課題
AWS導入における最大の課題は、豊富なサービス群を適切に理解し、最適な組み合わせを選択することです。
- 学習コスト:豊富なサービスの理解に時間が必要
- 設定の複雑さ:誤設定によるセキュリティリスク
- 料金の予測困難:従量課金による予算オーバーリスク
対策方法
制限事項を理解した上で、適切な対策を講じることで長期的な成功を実現できます。
失敗を避けるためには、段階的なアプローチと適切なサポート体制の構築が重要です。
- 1.
スモールスタート:必要最小限のサービスから開始
- 2.
専門家の活用:AWSパートナーによる導入支援
- 3.
予算アラート:Amazon CloudWatchによる料金監視設定
レンタルサーバー導入時の注意点
レンタルサーバーの選択では、将来の成長を見据えた長期的な視点での判断が重要になります。
制限事項
- 拡張性の限界:アクセス急増時の対応困難
- カスタマイズ制限:特殊な要件への対応不可
- 他ユーザー影響:共有サーバーでのパフォーマンス変動
対策方法
- 1.
将来計画の検討:3年後の成長を見据えた選択
- 2.
VPS・専用サーバー:共有サーバーの制限を回避
- 3.
移行計画:成長時のクラウド移行戦略策定
成功事例・ケーススタディ
実際の導入事例から学ぶことで、自社プロジェクトの成功確率を大幅に向上させることができます。
AWS導入成功事例
企業A(EC事業)
- 課題:セール時のアクセス集中によるサーバーダウン
- 解決:Auto Scalingによる自動拡張で売上機会損失を回避
- 効果:運用コスト60%削減、可用性99.99%達成
レンタルサーバー活用事例
シンプルな運用体制でも、適切なサーバー選択により大きな成果を得ることができます。
企業B(製造業)
- 課題:IT人材不足でサーバー管理が困難
- 解決:管理サポート付きレンタルサーバーで運用委託
- 効果:管理工数90%削減、安定運用の実現
まとめ:適切なサーバー選択のポイント
AWSとレンタルサーバーの選択は、単純なコスト比較だけでは判断できません。事業の現状と将来像、技術リソース、運用体制を総合的に考慮する必要があります。
小規模で安定したサイト運営を行う場合、レンタルサーバーの月額固定制は予算管理がしやすく、技術的な負担も軽減できます。一方、事業拡大や技術革新を重視する場合、AWSの従量課金制と豊富なサービス群が強力な武器となるでしょう。
重要なのは、3年後の事業成長を見据えた選択です。現在のコストだけを重視してレンタルサーバーを選択したものの、後にAWSへの移行が必要になれば、結果的に高額な移行費用が発生する可能性があります。逆に、小規模サイトでAWSを過剰に利用すれば、不要なコストが継続的に発生します。
技術的な専門性が不足している場合は、専門パートナーとの連携を検討することをお勧めします。適切なアドバイスにより、自社に最適なサーバー環境を構築し、安定した事業成長を実現できるはずです。
もし、AWSとレンタルサーバーのどちらが適しているか迷う場合は、お気軽にお問い合わせ ください。当社ではヒアリング内容に基づき、AWSを選択するべきかどうかも含め、お客様に最適なご提案をいたします。
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