2021.11.26

AWS Application Migration Serviceとは? ~CloudEndure Migrationとの機能比較~

DX(デジタルトランスフォーメーション)の前準備として、クラウド導入を検討されている方も多いのではないでしょうか?AWSでは「Server Migration Service」「CloudEndure Migration」など、様々なマイグレーションサービスが提供されています。「ツールが多すぎて何を選択したらよいか分からない」という方向けに、2021年5月に新しく登場したAWS Application Migration Serviceをご紹介しながら、CloudEndure Migrationとの機能比較もしてみます。

AWS Application Migration Serviceとは?

AWSのリフトアンドシフト型移行ソリューション(ITシステムをAWSへ移行を行う際の戦略のひとつ)として、CloudEndure Migration , AWS Server Migration Service , VM Importなどがあります。そして新たに2021年5月にAWS Application Migration Service(以降AWS MGN)がリリースされました。

AWS MGNは、仮想サーバ・物理サーバが移行対象です。また移行形式は、対象のサーバにMGNエージェントをインストールしサーバ全体をレプリケーションさせて移行を行う、CloudEndure Migrationに近い形式です。

AWSもAWS MGNを「the next generation of CloudEndure Migration新規ウィンドウで開く」と位置づけし、CloudEndure Migration やAWS Server Migration Serviceを利用するユーザにAWS MGNの利用を推奨しています。

AWS MGNの仕組み

AWS MGNを利用しサーバ移行を行う際の流れを、簡単にご紹介します。詳しく知りたい方は、AWS Application Migration Service Quick start guide 新規ウィンドウで開くをご確認ください。

AWS MGNを利用しサーバ移行を行う際の流れ

  1. (1)

    移行元サーバにAWS Replication Agentをインストールし、MGNコンソール 新規ウィンドウで開くよりレプリケーションサーバ設定を定義します。

    AWS Replication Agentのインストールは、Windows・LinuxによってAgent URL 新規ウィンドウで開くが異なります。更に、リージョンごとにRegion identityが異なるので、ご自身の環境にあったAWS Replication Agentをインストールしてください。(東京リージョンであればap-northeast-1)

  2. (2)

    AWS MGNの設定を行います。

    (1)で設定したレプリケーションサーバ定義を利用し、移行元サーバとレプリケーションを行います。レプリケーション実施後、任意の地点でレプリケーションサーバ内のデータを基に、新規Amazon EC2(データの移行先)を作成します。

今回実施した手順の仕組みは、以下の通りです。
移行元サーバで実行されているAWS Replication Agentからサーバ内のデータを受信し、Amazon EBSボリュームにサーバ内のデータを書き込みます。
レプリケーションサーバのデータ通信経路は、DirectConnect、VPN接続などのプライベートネットワーク経由での送信も可能です。ご自身の目的に合わせて通信経路を設定してください。

今回の手順を実施したことで、移行元サーバとのデータを常に最新状態に保つことができました。このあと、ユーザの都合のいいタイミングで移行先サーバに切り替えることで移行は完了となります。

下記図はAWS MGNを使ったサーバ移行のイメージ図です。ここでは、オンプレミスで構築された仮想環境下にある仮想サーバをAWSに移行しています。

オンプレミスで構築された仮想環境下にある仮想サーバをAWSに移行している図
AWS MGNを使ったサーバ移行のイメージ図

AWS Application Migration ServiceとCloudEndure Migrationを比較する

CloudEndure Migrationとは?

CloudEndure Migration(以降CloudEndure)はAWSが提供するマイグレーションサービスの一つです。物理・仮想サーバのWindows , Linuxに対応しており、サービス自体は無償(※1)で利用が可能です。スピーディに移行・切り替えが実現できるため、幅広いシーンで使い勝手がよいツールとして、多くのユーザに利用されています。

  • ※1 Cloud Endure利用時の通信やAmazon EC2インスタンスには、課金が発生します。

対応しているOS

AWS MGNとCloudEndureは、AWSが提供するマイグレーションサービスです。AWS MGNはCloudEndureに基づいているサービスですが、AWSマネジメントコンソールと統合されていることが、機能面の大きな違いになります。AWSの既存サービスとの連携がしやすくなったため、AWS MGNを利用することがAWSより推奨されています。

このAWS MGNとCloudEndureがどのように違うのか、深掘りしていきます。
まずは、対応しているOSについて比較します。下記の表より対応しているOSは、CloudEndureの方が「32bitの古いOS・WindowsクライアントOS」にも幅広く対応していることがわかります。

  • WindowsクライアントOSは、あくまでCloudEndureが対応しているだけです。利用時には、Microsoft側のライセンス規約を満たすか、別途確認が必要です。

対応OSの比較表

AWS Application Migration Service(AWS MGN) CloudEndure Migration(CloudEndure)
Windows
サーバOS

Windows Server
2008R2,2012,2012R2,2016,2019

  • 64bitOSのみ

Windows Server
2003,2003R2,2008,2008R2,2012,2012R2,2016,2019

Windows
クライアントOS
未対応 WindowsXP,7,8,10,Vista
Linux
  • SUSE Linux12以上
  • Debian Linux9以上
  • Ubuntu12.04以上
  • OracleLinux6以上
  • CentOS6以上
  • SUSE Linux11以上
  • Debian Linux8以上
  • Kali Linux2以上
  • Ubuntu12.04以上
  • OracleLinux6以上
  • CentOS5以上
Redhat RedHatEnterpriseLinux6以上 RedHatEnterpriseLinux5以上

対応OSについて詳しく確認したい方は、下記参考ページを確認してください。

料金

AWS MGNとCloudEndureのAWS利用料金について比較してみます。

  • 移行処理の中で作成されるAmazon EC2やAmazon EBSの利用料金は除きます。

CloudEndureは、制限なく無料で利用が可能です。しかしAWS MGNでは、Replication Agentをインストールしてから90日までは無料という期間制限があります。(一般的なサーバ移行の場合、90日間は十分余裕を持って移行できる期間です。)
無料期間終了後、移行したいサーバ1台につき1時間からコストがかかります。(従量課金制)
そのためサーバ移行が完了したのち、Replication Agentをアンインストールし、コストがかからないようにしておきましょう。

  • AWS MGNやCloudEndureによってプロビジョニングされたAmazon EC2やAmazon EBS料金は別途課金が発生します。

利用料金の比較表

AWS Application Migration Service(AWS MGN) CloudEndure Migration(CloudEndure)
利用料金
  • Replication Agentをインストールしてから90日までは無料。
  • 90日経過後、$0.042~(1時間あたり)、~$30(1か月あたり)のコストが発生する。
制限なく無料。

料金について詳しく確認したい方は、下記参考ページを確認してください。

ディザスタリカバリ機能

ディザスタリカバリ機能(以降DR)とは、自然災害・テロ・外部からの攻撃などによりシステムが壊滅的なダメージを受けた場合、システムを修復復旧するための仕組み・被害を最小限に抑えるための予防措置のことです。
CloudEndureには「CloudEndure Disaster Recovery」というDR対応のソリューションが存在しますが、AWS MGNにはCloudEndure Disaster Recoveryに相当する機能はまだありません。
AWS MGNはあくまで、CloudEndure Migrationの後継に当たるようです。AWS MGNにもDR機能が実装されるか、今後のアップデートに期待したいです。

  • CloudEndure Disaster Recoveryを使用した災害対策について詳しく知りたい方は、下記記事を参考にしてください。

(参考記事)CloudEndure Disaster Recoveryを使用した災害対策とは ~増える日本の災害とAWSを活用した災害対策について~ | AWS活用法

通信要件

AWS MGNの通信要件を確認していきます。こちらは、CloudEndureとまったく同じになります。詳細な通信要件を下記で解説します。

移行元サーバ 通信要件

TCP1500ポート
移行元サーバとレプリケーションサーバ間は、TCP1500ポートでの通信が必要です。このTCP1500ポートでの通信は、移行元サーバデータをレプリケーションする通信に利用されます。
AWS MGNサービスエンドポイントとTCP443通信
移行元サーバからAWS MGNサービスエンドポイントとTCP443通信が必要です。Replication Agentのアップデート、移行元サーバのステータス確認などに利用されます。

レプリケーションサーバ 通信要件

AWS MGNサービスエンドポイントとTCP443通信
レプリケーションサーバも、移行元サーバと同様に、AWS MGNサービスエンドポイントとTCP443通信が必要です。AWS MGNと接続し、レプリケーション状況のステータス管理等に利用されます。
WS MGNを使ったサーバ移行のイメージ図
AWS MGN通信要件のイメージ図

通信要件の比較表

AWS Application Migration Service(AWS MGN) CloudEndure Migration(CloudEndure)
移行元サーバ
  • TCP1500(レプリケーションサーバ)
  • TCP443(MGNサービスエンドポイント)
  • TCP1500(レプリケーションサーバ)
  • TCP443(CloudEndureサービスエンドポイント)
レプリケーションサーバ(Amazon EC2) TCP443(MGNサービスエンドポイント) TCP443(CloudEndureサービスエンドポイント)
  • 通信要件については、サービス名が違うためエンドポイントが異なります。それ以外の通信要件は同じです。

移行手順

AWS MGNとCloudEndureの移行手順は、どのような違いがあるのか確認していきます。
「サーバ1台を移行させる場合の移行手順」で比較します。

AWS Application Migration Service
(AWS MGN)
CloudEndure Migration
(CloudEndure)
  • (1)
    AWSマネジメントコンソールへログインする。
  • (2)
    Replication Agent用IAMユーザを作成する。
  • (3)
    レプリケーション構成の設定をする。
  • (4)
    移行元のOSにエージェントをインストールする。
  • (5)
    ターゲットマシンのAmazon EC2 Launch Templateの作成をする。
  • (6)
    テストモードでマシンの起動を行う。
  • (7)
    カットオーバーモードでマシンの起動を行う。
  • (1)
    CloudEndureアカウントを作成する。
  • (2)
    CloudEndureコンソールへログインする。
  • (3)
    CloudEndure用のIAMユーザを作成する。
  • (4)
    レプリケーション構成の設定をする。
  • (5)
    移行元のOSにエージェントをインストールする。
  • (6)
    ターゲットマシンのブループリントの構成をする。
  • (7)
    テストモードでのマシンの起動を行う。
  • (8)
    カットオーバーモードでのマシンの起動を行う。

移行のポイント

  • CloudEndureでは、CloudEndure専用のアカウント作成 新規ウィンドウで開くが必要。
    AWS MGNについては、AWSマネジメントコンソール上で全て設定することが可能です。
  • 移行対象のOSにインストールするエージェントが異なる。
    CloudEndureでは、「Installation Token」を指定しエージェントをインストールしていました。
    しかしAWS MGNでは、IAMユーザの「アクセスキー」、「シークレットキー」を指定し、エージェントをインストールします。

CloudEndure

> installer_win.exe -t <Installation Token> --no-replication

  • 「Installation Token」は、CloudEndure管理画面より確認可能です。
CloudEndure管理画面

AWS MGN

> AwsReplicationWindowsInstaller.exe --region ap-northeast-1 --aws-access-key-id <アクセスキー> --aws-secret-access-key <シークレットキー>

移行についてのまとめ

  • 移行手順だけでみると、AWS MGNの方が「CloudEndureアカウント発行やIAMアカウントの連携設定」などが不要になるため、移行しやすい。
  • AWS MGNでは、エージェントインストール完了後レプリケーションを開始させないように設定できるオプションが存在しない。(2021年10月現在)

CloudEndureでは、エージェントインストール時のコマンドオプションで「--no-replication」を指定することで、エージェントインストール完了後にレプリケーション開始させないように設定できるオプションが存在しました。このオプションは、レプリケーションサーバ作成のタイミングを制御できるため、課金タイミングを調整することができます。そのため、AWS利用料の削減に繋がります。
しかしAWS MGNでは、これに相当するオプションコマンドはまだ存在しません。
エージェントインストール完了後レプリケーションが開始され、AWS上にレプリケーションサーバが構築されます。AWS MGNでは、ユーザ側でレプリケーションサーバ作成のタイミングをコントールできないことを覚えておきましょう。

まとめ

今回の記事では、対応OS・料金・ディザスタリカバリ機能・通信要件・移行手順について、AWS MGNとCloudEndureを比較しました。
CloudEndureの方が、対応OSの種類、CloudEndure Distaster Recoveryの機能がある点などから、優位性があるように見えます。しかし、AWS MGNはAWSが「CloudEndureの後継」と位置付けているため、CloudEndure Distaster Recoveryに相当する機能が今後登場する可能性があります。
いずれにしても今後のサーバ移行においては、AWS MGNのサポートしていないOSの移行やDRの要件がない限りは、AWS MGNを利用していった方がよさそうです。
本記事を読んで、AWSへのサーバ移行を具体的にどう始めればよいかお悩みの方、移行後のセキュリティや運用監視など相談したい方は、是非当社までお問い合わせ 新規ウィンドウで開くください。

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