さまざまな業界で生成AIに注目が集まっている中、AWSも生成AIに関するサービスを提供しているのはご存じでしょうか。AWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」を利用すれば、手軽に最新の生成AIモデルを活用できます。マーケティングフローやワークフローの改善、バーチャルアシスタントの活用など、さまざまなシチュエーションで役立てられます。この記事では、Amazon Bedrockの概要やメリット、料金体系などについて、具体的な活用例を交えながら解説します。
目次
Amazon Bedrockとは
まず、Amazon Bedrockの概要について解説していきます。
「Amazon Bedrock」は、サーバーレスで手軽に最新の生成AIモデルを利用できるAWSのサービスです。生成人工知能(生成AI)は、会話や画像などの新しいコンテンツやアイデアを作成できるAIの一種です。従来のAIとは異なり、生成AIが自ら獲得した学習成果から新たなコンテンツを生成することができます。利用に専門的なスキルは不要で、誰でも簡単にコンテンツを生成できるため、業務効率化やアイデア創出などビジネスシーンでも活用が進んでいます。
Amazon Bedrockでは、大手AI企業が提供する複数の生成AIモデルを利用できます。日本では、2023年10月からスタートした比較的新しいAWSサービスで、マーケティングやワークフローの改善や効率化などに活用されています。
Amazon Bedrockの活用例としては、以下のようなものが挙げられます。
テキスト生成
新たなコンテンツ作成や、SNSへの投稿文章などの自動生成
画像生成
広告キャンペーンやプレゼン資料で使用する、魅力的な画像をスピーディーに生成
テキストおよび画像検索
顧客へのレコメンデーションの提案、社内に膨大に蓄積されているドキュメントやナレッジの一括検索や共有
バーチャルアシスタント
タスクの自動分類や対話型Q&Aなど、さまざまなワークフローの改善
テキスト要約
論文や文書、技術レポートなど長文を要約して重要な箇所を素早く抽出
Amazon Bedrockで利用できる7つの基盤モデル
次に、Amazon Bedrockで利用できる7つの基盤モデルと、それぞれの特徴を解説します。
なお、本記事に記載されている情報は2024年7月時点でのものです。随時追加される可能性があるため、最新情報は以下のAWS公式サイトよりご確認ください。
基盤モデルによる生成AIアプリケーションの構築「Amazon Bedrock」|AWS公式ページ
https://aws.amazon.com/jp/bedrock/?refid=cr_card
Amazon Titan
「Amazon Titan」は、Amazon社が提供している汎用モデルで、テキスト生成や画像生成、文章要約など、幅広い活用が可能です。また、Amazon Titanをデータベースに接続すると、検索用拡張生成(RAG)も実装できます。RAGとは、外部データベースからの検索結果を活用して回答する仕組みのことで、生成AIの課題と言われているハルシネーション対策にも使えます。
A121 Labs(Jurassic)
「Jurassic」は、A121 Labs社が提供する大規模言語モデルです。特長はさまざまな言語に対応している点で、英語をはじめ、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、イタリア語、オランダ語に対応しています。このモデルは、チャット形式のカスタマーサポートや、複雑な文章の要約・分析、ブランドのトーンに合わせた商品説明の執筆、コンバージョンの最適化を施したコンテンツ生成などの用途が想定されています。
Anthropic(Claude)
Anthropic社が提供する「Claude」は、汎用型の大規模言語モデルです。20万トークンという大量の情報を入力できるため、コンテンツの要約や財務資料などの比較、売上などの傾向予測などの分析にも適しています。20万トークンは500ページを超える資料に相当するため、長文の文書を要約する際にも重宝するでしょう。また、画像を読み込むOCR機能にも優れており、チャートやグラフなどの解析も可能です。
Cohere(Command, Embed)
Cohere社の提供する「Command」と「Embed」は、企業向けの大規模言語モデルです。RAG(検索用拡張生成)に特化しており、インターネット上の情報やインプットした膨大なデータに基づいた的確な回答を生成できる点が魅力です。この特性から、AIアシスタントとしての活用が想定されており、機密情報などを扱う際のデータプライバシーやセキュリティ対策も万全です。
Meta(Llama)
「Llama」は、Meta社が提供する大規模言語モデルです。高度な推論やテキストの要約、感情分析などに優れており、会話型AIとしてだけでなくコンテンツ作成や研究開発などに用いられることを想定しています。
Mistral AI(Mistral)
フランスのAIスタートアップMistral AI社が提供する「Mistral」は、少ないパラメータで効率よく稼働するコストパフォーマンスに優れた大規模言語モデルです。低レイテンシーも特長の一つで、コーディングの最適化やテキストの要約を得意としています。
Stability AI(Stable Diffusion)
Stability AI社の「Stable Diffusion」は、テキスト入力することで画像生成できるAIモデルです。自然言語(自然な話し口調)で入力することにより、複雑な構図の画像生成にも対応しており、ゲームのキャラクターや背景の画像生成、広告キャンペーンのバナー生成などが想定されています。
Amazon Bedrockを利用するメリットと利用するうえでの注意点
続いて、Amazon Bedrockを利用する際のメリットと注意点を解説します。
AWS Bedrockのメリット
さまざまなモデルを利用できる
先述の通り、Amazon Bedrockにはさまざまな基盤モデルが用意されており、それぞれに得意分野があります。自社の用途に応じた最適な基盤モデルを選べる点は、大きな利点と言えるでしょう。
基盤モデルのカスタマイズも可能
Amazon Bedrockは、既存の基盤モデルをカスタマイズできる点もメリットの一つです。大手AI企業の基盤モデルの利点を組み合わせるといった「良いとこ取り」も可能です。
AWSの他サービスとの連携が簡単
Amazon BedrockはAWSサービスのため、他のAWSサービスとの連携もスムーズに行えます。また、AWSサービスの利用者数は非常に多いため、既にAWSサービスを利用している場合は組み込みやすく、最新機能の利用談やハウツーなどもオンライン上で見つけやすいという利点もあります。
セキュリティ面も安心
企業が生成AIを構築する際、社内データを入力することに対して心配する方も少なくありません。その点、Amazon Bedrockは入力したデータが学習に利用されることはなく、閉域ネットワークにも対応しているため、安心して利用できます。
AWS Bedrockの利用上の注意点
特定のリージョンでしか利用できない
Amazon Bedrockは、2024年7月現在、東京リージョンのみ対応しており、大阪リージョンでは利用できません。また、リージョンによって利用できるサービスが異なる場合があります。Amazon Bedrockが利用できるリージョンについては、以下のAWS公式サイトでご確認ください。
Amazon Bedrockユーザーガイド(サポートされているAWSリージョン)|AWS公式ページ
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/bedrock/latest/userguide/bedrock-regions.html
Amazon Bedrockの料金体系と料金例
最後に、Amazon Bedrockの料金体系を解説します。
Amazon Bedrockの料金体系
Amazon Bedrockは、モデルの利用やカスタマイズに料金が発生します。料金プランの種類は、モデルの使用回数に基づいて支払う「オンデマンド」や「バッチ」と、時間ベースや契約期間に基づいて支払う「プロビジョンドスループット」があります。料金プランの内容は、利用するモデルやリージョンによって異なりますので、詳しい料金体系や具体的な料金例は、以下よりご確認ください。
Amazon Bedrockの料金|AWS公式ページ
https://aws.amazon.com/jp/bedrock/pricing/
Amazon Bedrockの料金例
ここでは、Amazon Bedrockの実際の料金例をご紹介します。以下は、東京リージョンで「Meta Llama」を利用した場合の料金例です。
オンデマンド・バッチの料金例
入力トークン1,000個ごと | 出力トークン1,000個ごと | |
---|---|---|
Llama 3 Instruct(8B) | 0.0003 USD | 0.0006 USD |
Llama 2 Chat(13B) | 0.00075 USD | 0.001 USD |
プロビジョンドスループットの料金例
1か月契約 (モデルごとの時間料金) |
6か月契約 (モデルごとの時間料金) |
|
---|---|---|
Llama 2 Pretrained と Chat(13B) | 21.18 USD | 13.08 USD |
Llama 2 Pretrained(70B) | 21.18 USD | 13.08 USD |
その他のモデルの料金例などは、以下よりご確認いただけます。
Amazon Bedrockの料金|AWS公式ページ
https://aws.amazon.com/jp/bedrock/pricing/
まとめ
Amazon Bedrockは、さまざまな大手AI企業の生成AIモデルを利用できる生成AIサービスで、サーバーレスで手軽に生成AIアプリを開発できます。大手AI企業のさまざまな基盤モデルをラインアップしていて、用途に合わせて高性能な生成AIを気軽に試すことが可能です。この機会にAmazon Bedrockを活用して生成AIを導入し、業務フローやマーケティングフローの劇的な改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
なお、生成AIの導入についてお悩みの際は、当社までお気軽にご相談 ください。ご要望やご予算、スケールなどに合わせたカスタマイズも可能です。