2024.01.10

ガバメントクラウドとは? 移行の目的や先行事業の内容をわかりやすく解説

2021年に設立したデジタル庁が推進している「ガバメントクラウド」。現在、多くの地方公共団体が、このガバメントクラウドへの移行作業に追われています。では、なぜ政府はガバメントクラウドへの移行を推進しているのでしょうか。この記事では、ガバメントクラウドの基本知識や移行の目的、現在どのくらい導入が進んでいるかなどを、神戸市の先行事業の事例を交えながら解説します。

ガバメントクラウドとは?

まず、ガバメントクラウドの概要について説明します。

ガバメントクラウドとは

ガバメントクラウドとは、日本の行政機関が共通して利用する、政府運用のクラウドサービス環境のことです。デジタル庁公式サイトでは、ガバメントクラウドについて以下のように説明しています。

"政府共通のクラウドサービスの利用環境です。クラウドサービスの利点を最大限に活用することで、迅速、柔軟、かつセキュアでコスト効率の高いシステムを構築可能とし、利用者にとって利便性の高いサービスをいち早く提供し改善していくことを目指します。地方公共団体でも同様の利点を享受できるよう検討を進めます。"
引用元:ガバメントクラウド|デジタル庁 新規ウィンドウで開く

これまでの行政機関や自治体は、ITシステムをそれぞれ独自に開発し、運用してきました。その結果、利用者の利便性やセキュリティにバラつきが出てしまい、システム担当者や行政サービスを利用する国民に、しわ寄せが及んでいたのです。このような課題を解決すべく、2021年よりガバメントクラウドの本格構築と移行が、デジタル庁の主導によってスタートしました。

ガバメントクラウドの対象クラウドサービス

ガバメントクラウドの環境を整備するため、日本政府は対象クラウドサービスを公募しました。2023年12月現在、以下の5サービスの採用が決定しています。

  • Amazon Web Services(AWS)
  • Google Cloud Platform(GCP)
  • Microsoft Azure
  • Oracle Cloud Infrastructure(OCI)
  • さくらのクラウド

出典元:令和4年度募集分ガバメントクラウド対象クラウドサービス一覧(令和5年4月3日改訂) PDF
出典元:令和5年度新規募集分ガバメントクラウド対象クラウドサービス PDF

当初はAWSとGCPのみの採用でしたが、2022年10月にはMicrosoft AzureとOCIが追加されています。また、2023年11月28日付けで新たに「さくらのクラウド」が選定され、初の国産クラウドサービスが採用されたと話題になりました。

ガバメントクラウド移行の目的・メリット

続いて、デジタル庁の資料を参考に、ガバメントクラウド移行の目的やメリットをご紹介します。

① サーバー・OS・アプリケーションの共同利用によるコスト削減

ガバメントクラウドを活用することで、地方自治体や政府関係機関はサーバーやOS、アプリケーションを共同で使えるようになります。その結果、自治体ごとにかかっていた開発・運用費を浮かせることができ、大幅なコスト削減につながります。

② 情報システムの迅速な構築と柔軟な拡張が可能になる

民間企業がガバメントクラウド上で開発したアプリケーションを、自治体が自由に選べる仕組みを作ることで、スピーディーに新たなサービスを提供できるようになります。将来的には、自治体の主要業務に関するアプリケーションがガバメントクラウド上にあり、自治体がそれぞれ最適なものを選べる環境が整備されていく見込みです。

③ 庁内外のデータ連携が容易になる

ガバメントクラウドへの移行は、政府や自治体だけではなく、公共のサービスを利用する国民にもメリットがあります。デジタル庁は、公共サービスメッシュを構築しており、2025年度中の本稼働に向けて動いています。
公共サービスメッシュとは、自治体が持つ住民情報などを行政機関同士で連携するヨコとタテの仕組みです。これにより、オンライン手続きをする際などに、最小限の入力で手続きを進められるようになります。
出典元:公共サービスメッシュ|デジタル庁 新規ウィンドウで開く

④ 各団体運用負荷が減少する

ガバメントクラウドでは、最新のセキュリティ対策が常に実行されています。これにより、各自治体が独自にセキュリティ対策を行わずにすみ、セキュリティの安全性も向上します。
出典元:地方自治体のガバメントクラウド活用に関する検討状況(P4)|総務省 PDF

このように、日本の行政機関全体がガバメントクラウドに移行することで、政府や自治体にとっても、私たち国民にとってもさまざまなメリットが得られると見込まれています。

ガバメントクラウド移行の現状

2021年にデジタル庁が発足されて以降、日本全国の自治体でガバメントクラウドへの移行が推進されており、すでにガバメントクラウドを活用している自治体もあります。ここからは、実際にガバメントクラウドをどのように活用しているのか、具体的な事例を交えながらガバメントクラウド移行の現状をご紹介します。

先行事業としてすでに活用がスタートしている自治体

先行事業として、すでに以下8つの自治体でガバメントクラウドの移行が進んでいます。

ガバメントクラウド

  • 兵庫県神戸市
  • 岡山県倉敷市(香川県高松市・愛媛県松山市と共同提案)
  • 岩手県盛岡市
  • 千葉県佐倉市
  • 愛媛県宇和島市
  • 長野県須坂市
  • 埼玉県美里町(埼玉県川島町と共同提案)
  • 京都府相楽郡笠置町

出典元:ガバメントクラウド先行事業の採択結果について(市町村の基幹業務システム、P2)|デジタル庁 PDF

政令指定都市の神戸市から、人口約1,000人の笠置町まで、大小さまざまな規模の自治体でガバメントクラウドの移行作業が進んでいます。これらの自治体の取り組みが、今後のガバメントクラウド移行のモデルケースとなっていくでしょう。

AWSを利用した神戸市での先行事業の取り組み

先行事業の自治体として選ばれた神戸市では、対象クラウドサービスの一つであるAWSを活用し、「オンライン申請の審査効率化」を行っています。これは、行政手続きをスマートフォンで完結できるSaaSサービス「Graffer スマート申請」と連携し、煩雑な手続きの利便性を上げる試みです。

また、神戸市自らガバメントクラウド上でのシステム構築に取り組んでいます。それが、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として、全国民に給付された一律10万円の特別定額給付金の申請を、Web上で確認できるクラウドシステムです。

このように一部の自治体では、すでにガバメントクラウドの本格的な活用が始まっています。今後は先行事業に限らず、全国の自治体でガバメントクラウドへの移行が進んでいくでしょう。
出典元:自治体のためのAWS(神戸市) | AWS 新規ウィンドウで開く

対応を迫られる地方自治体

政府は、2025年度末を目標期限として「各自治体の基幹業務システムの標準化」を掲げています。なお、対象になっている基幹業務は、住民基本台帳や国民年金など20種類の業務です。2025年度末という期限に法的拘束力はないのですが、この期限に間に合わせるため、各自治体におけるガバメントクラウド移行の取り組みが、急ピッチで進められています。

各自治体におけるガバメントクラウド移行の取り組み

出典元:自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】(P15) PDF

スムーズな移行を実現するためには、現行の基幹業務の流れなどをしっかりと洗い出し、綿密な計画を立てなければなりません。しかし、ITシステムは委託事業者に任せきりで、知識を持った担当者がいない自治体も少なくないと見られています。こうした背景から、ガバメントクラウド移行を進めるにあたって、現場では少なからず混乱が起こるものと危惧されています。

まとめ

デジタル庁自らが率先してガバメントクラウド上でWebサイトを構築し、神戸市などの自治体が先行事業をスタートするなど、すでにガバメントクラウドへの移行は大きく動き出しています。
しかし、これまで独自のシステムを構築・運用してきた自治体にとって、ガバメントクラウドへの移行は簡単なものではありません。2025年度末という目標期限が迫るなか、自治体や行政機関の担当者は、迅速な対応を求められています。当社では、AWSへの接続や運用をサポートしています。興味があるご担当の方は、ぜひご相談 新規ウィンドウで開くください。

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